Nokia VRRP のためのファイアーウォールルール

以前の記事の補足で VRRP の通信のためのファイアーウォールルールについてです。 デフォルトでは FireWall-1 そのものに関連する通信は暗黙で許可されるようになっているので、ファイアーウォールを動作させるためのルール (例えば SmartCenter との通信のためのルール) を書く必要はありません。 しかし、VRRP に関しては明示的に通信を許可する必要があるので注意が必要です。

必要なルールは「Nokia Network Voyager for IPSO x.x Reference Guide」 の VRRP 関連の部分に載っています。 IPSO 4.2 の場合は以下の様になっています。

Configuration Rule for Check Point NGX FP1

Source Destination Service Action
cluster-all-ips
mcast-224.0.0.18
fwcluster-object vrrp
igmp
Accept

Where:

  • cluster-all-ips is the Workstation object you created with all IPs.
  • fwcluster-object is the Gateway Cluster object.
  • mcast-224.0.0.18 is a Workstation object with the IP address 224.0.0.18 and of the type host.

Configuration Rules for Check Point NGX FP2 and Later

Source Destination Service Action
Firewalls
fwcluster-object
mcast-224.0.0.18 vrrp
igmp
Accept

Where:

  • Firewalls is a Simple Group object containing the firewall objects.
  • fwcluster-object is the Gateway Cluster object.
  • mcast-224.0.0.18 is a Node Host object with the IP address 224.0.0.18.

このように FireWall-1/VPN-1 のバージョンによってビミョーに書いてあることが異なっているのでお手許の Voyager Reference Guide を参照することをお勧めします。

… とここまで書いて SmartDashboard R60 の "Global Properties" の "Implied Rules" の設定画面に VRRP の項目が追加されているのを見つけました。 ちょっと試せていないですが、これがチェックされていれば済む話じゃなかろうか…

FireWall-1 (Nokia) いざという時に使うかも知れないコマンド

例えば、FireWall-1/Nokia の管理者が突然いなくなった (!) 等の困ったときにお世話になりそうなコマンド類をまとめておきます。

1. IPSO のパスワードリセット
Nokia をシングルユーザモードで起動して、/etc/overpw を実行します。 シングルユーザモードで起動するには、IPSO Boot Manager を使用する方法と IPSO の Boot プロンプトで指定をする方法があります。 起動時に例えば以下のように Boot Manager を起動するか IPSO を起動するかのプロンプトが表示されると思いますので、どちらかを選択します。

1   Bootmgr
2   IPSO
Default: 1

Boot Manager を選んだ場合の操作例を示します。

Starting bootmgr
Loading boot manager..
Loading boot manager..
Boot manager loaded.
Entering autoboot mode.
Type any character to enter command mode. (ここですかさず何かキーを押す)
BOOTMGR[1]> boot /image/current/kernel -s
Booting /dev/wd0f:/image/IPSO-x.x-*****/kernel

IPSO のプロンプトでの操作例を示します。"-s&quot を入力します。

>> IPSO boot
Usage: [[wd(0,f)]/kernel][-abcCdhrsv]
Boot:-s
Booting wd(0,f)/image/IPSO-x.x-*****/kernel

シングルユーザモードで起動後は /etc/overpw を実行し、Ctrl+D を押してマルチユーザモードへ移行します。

Enter pathname of shell or RETURN for sh: (Enter キーを入力)
# /etc/overpw
This program is used to set a temporary admin password when you have
lost the configured password.  You must have booted the machine into
single user mode to run it.  The configured password will be changed.
Please change the temporary password as soon as you log on to your
system through voyager.
Please enter password for user admin: (パスワードを入力)
Please re-enter password for confirmation: (パスワードを入力)
Continue? [n] y
Running fsck...
(略)
Admin password changed.  You may enter ^D to continue booting.
THIS IS A TEMPORARY PASSWORD CHANGE.
PLEASE USE VOYAGER TO CREATE A PERMENANT PASSWORD FOR THE USER ADMIN.
# (Ctrl+D を押す)

2. ライセンスファイルが無いとき
FireWall-1 は動いているものの、インストールしたライセンスファイルが無くなっていて、ライセンス情報のみバックアップしたい、というようなことがあるかも知れません。 このような時にはコマンドラインツール cplic print コマンドを使います。

以下の様に -x オプションでシグネチャつきで既存ライセンスを表示し、表示された情報を保管しておきます。

# cplic print -x
Host             Expiration  Signature                             Features
10.1.2.3         never       ************SIGNATURE***************  cp********* CK-*********

出力されたライセンス情報は cplic put を使って投入可能です。

# cplic put 10.1.2.3 never ************SIGNATURE************** cp********* CK-*********

3. Nokia に telnet や http でアクセスできないとき
Voyager (Nokia の GUI 管理ツール) で設定しようにもアクセスできない、というときはインストールされているファイアーウォールポリシーによりアクセスが拒否されているのかも知れません。 そのようなときは以下のコマンドを Nokia 上で実行することによりポリシーをアンインストールすることができます。

# fw unloadlocal

もちろん、実環境で稼動しているファイアーウォール上で実行してはまずいです。

FireWall-1 で RADIUS の Class attribute を使ってユーザをグループ化する

以前 FireWall-1 と RADIUS サーバの記事を書きましたが、この後 RADIUS の Class 属性を用いてユーザをグループ化できることを知ったのでまとめておきます。 手順はさほど難しくなく、先の記事の手順に加えて GUIdbEdit というツールを用いて add_radius_groups の値を true にするだけでオッケーです。この方法は以下の通りです。

  1. GUIdbEdit.exe は SmartConsole の PROGRAM ディレクトリの中にあり、起動時に SmartCenter サーバを指定できます。
  2. 左のツリーから "Table" – "Global Properties" – "properties" を選び、右画面で "Object Name" が "firewall_properties" の行を選択すると下に add_radius_groups という "Field Name" の存在を確認できると思います。 この add_radius_groups の "Value" を true にして、"File" – "Save All" して終了します。 もし、add_radius_groups が見つからなかったら "Search" – "Find" メニューより検索しましょう。
  3. SmartCenter が稼動しているサーバ上で cpstop/cpstart を実行してサービスを再起動します。

以上で、準備が整いました。 後はポリシーを作成してインストールするだけです。

ポリシーについてですが、"Users and Administrators" – "User Groups" で "RAD_(クラス属性の値)" というグループを作成し、これを用いてポリシーを作成すれば良いです。 グループの中身は空でよいです。 例えば RADIUS サーバに Class が "Users" として登録されているユーザに対しては、グループ名が "RAD_Users" のグループを含むポリシーが適用されます。

RADIUS サーバの登録の仕方は先の記事を参照してください。 "External User Profiles" の "Match all users" の設定も忘れずに行っておきます。 このように作成したポリシーをインストールすれば、ユーザとその所属するグループの管理を RADIUS で行うことができるようになります。

Class 以外の RADIUS attribute を用いるように変更することも可能です。 詳しくは「ファイアウォールと SmartDefense (Firewall and SmartDefence)」の中の「認証 (Authentication)」の章に書いてあります (R60A の場合) 。 R55 の頃のドキュメントには記述はないようですが、昔から出来たようです (例)

CNN News で聴き取ったフレーズ:「drop their pants」

最近英語のリスニング力向上ののために CNN の Podcast を聞いています。 何についてしゃべっているかはわかることが多いのですが、詳細までなかなか聴き取れず CNN ウェブサイトで内容を確認したりしています。

そんな中で聴き取ったフレーズ「… drop their pants …」えーっ、それ何のニュースよ????、と思ったのですが、何とアメリカには列車に向かってお尻を出すイベントがあるそうです。 Mooning of Amtrakというこのイベント、写真を見ると確かに「drop their pants」してますね。 「Moon」に「露出した尻を突き出す」という意味があることも初めて知りました。

しかし、よくわからないのが、「どうしてこういうことをしているか」です。 先の (公式?) Web サイトの「How it started」の説明を見てもよくわかりません。 伝統だからってことなのでしょうか…

Cygwin/X (X 端末) で Solaris のログイン画面が表示されなくなった件

Cygwin/X + Solaris という組み合わせを使って PC 上に Solaris のログイン画面を表示させて使うことがよくあるのですが、複数のネットワークインターフェイスを持つ Solaris サーバで X がうまく使えないことがありました。 そのときの解決方法の備忘録です。

具体的には、以下のような症状がありました。

Cygwin/X に Solaris のログイン画面を表示しようとすると、黒い X の画面が表示され、
ログイン画面起動待ちのカーソルが表示されるところまで行くがその先のログイン画面が表示されない。

ps コマンドで確認してみると、dtlogin から /usr/dt/config/Xsetup が呼ばれますが、この Xsetup の以下の行で処理が止まってしまって dtgreet が起動されるところまで行かないようです。

/usr/openwin/bin/xset fp+ "tcp/${FS_HOSTNAME}:7100"

実際に ps コマンドで確認すると ${FS_HOSTNAME} の部分は IP アドレスになっているのですが、このアドレスをよく見ると Cygwin/X を起動している PC から到達不能なアドレスになっています。 X サーバは PC 上で動作するのでこれはまずいですね。 Solaris サーバが複数のインターフェイスを持っているためこのようなことが起こってしまったのです。

/etc/hosts を修正して Xsetup 中で実行される、

/usr/bin/getent ipnodes "${Hostname}" | \
/usr/bin/head -1

あたりで返される IP アドレスが Cygwin/X を起動している PC から到達可能なアドレスとなるようにしました。 これで無事問題解決しました。

Sun SPARC サーバの RSC、ALOM 用ポートをシリアルコンソールとして使う

Sun の SPARC サーバには RSC や ALOM というシリアルポートがついていたりします。 どういうものかは、こちらの記事を見ていただくとして、ここではこれらをシリアルコンソールとして使う場合のポイントをまとめます。 Sun サーバにつなげるディスプレイがなかったときのための備忘録のようなものです。

まず、コンソール用デバイスとして、RSC/ALOM ポートを指定しなければなりません。 デフォルトだと、入力デバイスはキーボード (keyboard) 、出力デバイスはディスプレイ (screen) となっているようです。 システムコンソールを RSC/ALOM ポートにするためにこれらのデバイスの指定を rsc-console/ttya にします。

OK プロンプトを使ったコンソールデバイスの指定 (RSC の場合)
ok setenv input-device rsc-console
ok setenv output-device rsc-console
(ALOM の場合)
ok setenv input-device ttya
ok setenv output-device ttya

printenv で設定値を確認することもできます。

OK プロンプトを出すには、起動時に STOP+A を押さなければならないのですが、それが難しい (STOP キーがついていない!) 時は Solaris のコマンドを使って切り替えが可能です。

Solaris のコマンドによるコンソールデバイスの指定 (RSC の場合)
# eeprom input-device=rsc-console
# eeprom output-device=rsc-console
(ALOM の場合)
# eeprom input-device=ttya
# eeprom output-device=ttya

設定後はシステムをリブートしなければなりません。 RSC の場合、更に RSC シェルのコマンドで切り替えも可能で、

rsc> bootmode -u normal

と入力すると直後のリブート時のみコンソール出力を RSC ポートにすることができます。 ちなみにこの時 eeprom で確認すると rsc-console が入出力デバイスとして選択されていますが、次回起動時は元の設定に戻ってしまいます。

RSC/ALOM ポートをシステムコンソールとして指定した後は、RSC/ALOM コマンドシェルと、コンソールを切り替えて使わなければなりません。 RSC/ALOM コマンドシェルからコンソールに切り替えるには以下の RSC/ALOM コマンドを入力します。

console

RSC/ALOM のコマンドプロンプトに戻るには、デフォルトで以下のエスケープシーケンスを打ちます。

~. (RSC の場合)
#. (ALOM の場合)

「反応がない」と焦ったときにこのエスケープシーケンスを入力すると、RSC/ALOM のプロンプトに戻れたりすることがあります。 これは console コマンドを打ったけどシステムコンソールが切り替わっていなかったので出力が何もなかったというような時ですね。

「鉄道模型スペシャル No.2」 他2冊

鉄道模型関連の本を3冊ほど紹介しておきます。 「本の紹介ばかりせず、早く自分でレイアウトを作ってみせろ」と言われてしまいそうですが、小さい子がいるとなかなか…

鉄道模型スペシャル No.2
Amazon にも楽天にも置いていないようなのですが、既にリアル書店では販売されていました。 モデルアートの「鉄道模型スペシャル No.2」です。No.1 の時も書きましたが、鉄道模型レイアウト制作に特化した雑誌です。

今回の特集は「小型レイアウトの製作」ということでトミックスのミニカーブレールを使うようなレイアウトが5作品紹介されています。 各製作工程は多くの写真を使って細かく説明しています。 私の場合、小型レイアウトよりは単体で走らせることができなくてもモジュールレイアウトの方が好きなのですが、例えば「昭和の鉄道模型をつくる」を仕上げて次は同じような小型レイアウトを1から自分で作ってみよう、というときに参考になると思います。

その他にめぼしいところでは、エアブラシの入門用記事とジオコレ現代住宅を使った工作記事が載っています。 後者は手間のかけ方を3段階に分け、ゲート跡処理&ウェザリング程度で軽く仕上げる例からエッチングパーツ等を用い手間をかけてディテールアップした例まで3パターンの作例を紹介しています。 大掛かりな改造はありません。 このシリーズはせっかくそれなりの雰囲気で塗装されているので、時間が限られた社会人にとってどこまで手を入れるかは難しい問題かも知れませんね。

Let’s Play Layout (レッツプレイ・レイアウト)
次の2冊はネコ・パブリッシングからの A5 サイズの本です。 最初は「Let’s Play Layout」。その名の通りレイアウト制作の本です。

RM MODELS に掲載された秀作レイアウトが紹介されていたりもしますが、私が気に入ったのは「シーナリーの作り方 46例」です。 月刊誌や入門用書籍ではなかなか紹介されづらい部分が説明されているように感じました。 この記事の中ではストラクチャー関連はほとんど無いのですが、地面関係 (まさに地面の作り方からパウダー/バラスト撒き、樹木/草木表現など) の作り方が充実しています。 鉄道模型スペシャルと違って N だけでなく HO にも対応していて、例えばバラストの撒き方は N と HO のそれぞれを解説していたりします。

本書の後半部分は実際のレイアウト作例がいくつも紹介されています。こちらではストラクチャ関連も出てきます。 HO のストラクチャって手をかけてつくっていますよね。

Nテク完全マニュアル
こちらは N ゲージの車両製作テクニックの解説本です。 基礎編で素組みに近いところから始まって、応用編で様々な加工・ディテールアップテクニックを紹介する形になっています。 RM MODELS の付録でも基本的なキットの組み方が紹介されていたことがあったと思いますが、本書ではそこからランクアップするための様々なテクニックも網羅されています。

車両製作の記事はどちらかというと作例ありきで書かれることが多いように思いますが、本書では用いる技法のテーマがあって次に作例が来るので消化しやすいと思います。


関連記事
エアブラシのススメ

PCM-D50 のマイク位置、DPC

PCM-D50 についての補足を書きます。

マイク位置について
「X-Y ポジション」の 90度、「ワイド・ステレオポジション」の 120度の他、平行して正面に向く位置 (勝手に「0度」と呼びます) の計3箇所で止まるようになっています (AV watch の参考記事)。 ただ、関係者のコメントからすると、3箇所の止まる位置以外にも自由な方向に向けて好きなだけ微妙な調整をしてください、ということのようで、これらの位置はあくまでも目安に過ぎません。

120度の位置では[右マイク-右チャンネル、左マイク-左チャンネル]ですが、90度の位置では[左マイク-右チャンネル、右マイク-左チャンネル]に切り替わっていてちゃんとイメージ通りに録音されます。 ではマイクが切り替わる境界がどこかというと、2つのマイクを両方とも 0度の位置から内側に向けると左右が反転します。 どちらか1つが 0度か 0度より外側に向いていれば[右マイク-右チャンネル、左マイク-左チャンネル]になります。

デジタル・ピッチ・コントロール機能 (DPC)
結構気に入っている機能がこの DPC です。 ピッチを変えず再生速度を +100% ~ -75% の範囲で変えられる機能です。 私にとってはこちらの機能も欲しかったのですが、ピッチを変えて再生することはできません。 「スピード・コントロール」機能とした方がわかり易い気がするのですが…

PCM-D50 は WAV ファイル、MP3 ファイルを再生することができます。 録音は WAV ファイルのみです。

この DPC を 範囲指定の繰り返し再生 (A-B リピート) 機能と組み合わせて、バンド練習曲の耳コピーに活用しています。 私はシンセをやっていた頃から楽器を弾きながらパソコンに向かうのが苦手で、例えばミュージックアナライザ等の便利なツールもありますが、PCM-D50 のような小物で済むとありがたいのです。

耳コピ用に同じピッチでスロー再生できる機器は確か AKAI が最初に出したんじゃないかな。 私はコピーはあまりやらなかったので、この手の機器を使うことはなかったのでした。

3回に渡って PCM-D50 関連の記事を書きましたが、かなり気に入っています。 今のところ不満なのは SonicStage Mastering Studio で直接 MP3 出力ができないところだけです。 まあ、他の PCM レコーダーを買ったとしても同じように満足したと思いますが、バンド練習時の録音機材が MD レコーダー → PCM レコーダーになるということはそれだけインパクトのあることでした。

SonicStage Mastering Studio のエフェクトに感動

PCM-D50 で録音したバンド練習の音源の処理は以下のようになります。

  • SonicStage Mastering Studio を使って1つの .WAV ファイルから演奏部分を切り出して、複数の .WAV ファイルを作成。
  • 続いて iTunes 等を使って .WAV ファイルから .MP3 に変換。

実は SonicStage Mastering Studio (以下 SSMS) は PCM-D50 を購入する前から VAIO にプレインストールされていたのですが、起動時画面を見て特定用途向けと判断し全く使っていませんでした。 PCM-D50 を購入して初めて、録音済み .WAV ファイルを分割して、マスタリング用エフェクトをかけることができるのに気づいたのです。 下の画面のような説明が起動時画面に表示されますが、何のことやらって感じませんか?

まあ、特定用途向けなのは確かなのですが…

で、SSMS に付属するマスタリング用エフェクトがコンシューマー用 PC には似つかわしくない程のプロ用なのです。 いや正直に言うと私自身はマスタリング用のエフェクターには詳しくなく、マスタリング用エフェクトというと (アナログの!) コンプレッサーぐらいしか思いつかなかったのですが、マスタリング用エフェクトのおまけにバイオがついているという表現 (ちょっと古い記事です) もあるぐらい SSMS はスゴいもののようです。

我が家の VAIO にプレインストールされた SSMS は Version 2.4 なのですが、実際に使ってみるとベーシックな5バンドの EQ から、音圧や音場の広がり (ステレオだけでなく 5.1ch 用も!) を調整するためのものなど様々なエフェクトが用意されています。

私の場合、 PCM-D50 の主用途はバンド練習の演奏確認としてメンバーに配る音源作成なわけですが、このような目的では録音時のマイクセッティングに時間をかけるわけにはいきません。 (ギター、シンセとボーカル用マイクのセッティングをしなければならないし、こちらの方が重要なのです!)

また、PCM-D50 の場合、録音レベルはマニュアル調整しなければならないので演奏中もメーターが視認できる位置に置いておきたくなります。 加えてドラムやモニタースピーカー、ギター/ベースアンプ類等機材の配置もこのような録音のことは考慮せず決められているわけで、結果としてどうしてもバランスが偏った録音になりがちです。

このような状況で特に以下の2つのエフェクトが有用だと感じています。

Sony Localization Equalizer Plugin
これは周波数とパン位置をレンジで指定して音量調整するものです。 つまり特定のパートを持ち上げたり、引っ込めたりすることがある程度可能なのです。 録音時の配置にもよりますが、2台のギターのうち音量の小さい方を持ち上げて確認しやすくする、ということができるのです。

下の図を見てください。 縦軸が周波数、横軸が定位を表すのですが、「1」で示される四角のように Range を指定できます。

そしてこの Range に対して右のスライダーで音量調整ができます。 この図では +5dB の補正をしてます。 この Range が5つも設定できてしまうわけです。これってすごくないですか?

WAVES S1 Stereo Imager
これはステレオの広がりを調整するエフェクトです。

原音より狭める処理はともかく広げる処理というのは今一つどういう処理をしているのかよくわかりませんが、これをかけることによって各パートの演奏が確認しやすくなることがあります。

この他にもアナログテープの圧縮効果をシミュレーションしたり、ノイズ除去をしたり等々様々な効果を得ることができるエフェクト満載です。SonicStage Mastering Studio Version 2.4 の付属エフェクト一覧を示しておきます。 少数派でしょうけれど、これを見て VAIO が欲しくなってしまう人もいるのではないでしょうか?

  1. Sony Oxford Multichannel 5 Band EQ + Filters
  2. Sony Oxford EQUALISER
  3. Sony Oxford Inflator
  4. Sony Oxford Restorer
  5. Waves S360 Surround Imager
  6. Waves Renaissance Bass
  7. Waves S1 Stereo Imager
  8. Waves L1 Ultramaximizer
  9. QSound QSurround 5.1
  10. QSound QSurround Virtualizer
  11. QSound QMSS
  12. Sony Downmix Plugin
  13. Sony Fader Plugin
  14. Sony Surround Panner Plugin
  15. Sony Localization Equalizer Plugin

また VST エフェクトプラグインや DirectX オーディオエフェクトプラグインを追加することができます。 Premiere Elements でも VST が使えましたが、シーケンサー (っていうか DAW ソフト) だけでなく様々なところで使えるのですね。 ちなみに SSMS のプラグインは他の VST ホストでは動かないらしいです。

ちょっと注意点です。

PCM-D50 付属の SSMS は付属するエフェクトの数が少ない
PCM-D50 に付属する SonicStage Mastering Studio Recorder Edition では使用できるエフェクトの数が VAIO プレインストールのものより少ないです。以下のものしか使えません。これだとちょっと淋しいですねぇ。

  • Sony Downmix Plugin
  • Sony Fader Plugin
  • Sony Surround Panner Plugin
  • Sony Localization Equalizer Plugin

エラーメッセージが表示された
SSMS を初回起動後、いきなり .WAV ファイルをロードして編集モードに移行し、サウンド再生をしようとすると以下のエラーメッセージが表示されました。

入力、または出力に使用するデバイスや端子が選択されていません。
それぞれのデバイスの選択状態を確認してから再度操作を行ってください。

このエラーが表示されたときは、「入力を選択する」の画面で何か入力を選択すると良いようです。 1度選択するとエラーは出なくなりました。

…どうでも良いかも知れませんが参考までに書くと、バンド演奏時のギター用のエフェクトは BOSS SE-70 を使っています。

バンド練習録音用に PCM-D50 を購入

MD 環境を卒業したいと長く思っていたのですが、とうとう PCM レコーダーを買ってしまいました。 Roland R-09R-09HR や Zoom H2H4 等も候補だったのですが、結局 Sony の PCM-D50 を購入してしまいました。 普通に購入すると価格がかなり違いますが、諸般の事情 (Sony Style で使えるそれなりの金額の割引クーポンがあったとかそういう話です) により、今回は価格差は問題となりませんでした。 (2009.11.23 追記:バンドプレイヤーでリニア PCM レコーダーをお探しの方は TASCAM 製が良いかも。 詳しくは「コピーバンドのステップアップ - ヘタレな趣味の道」をご覧ください。更に追記:Sony からは PCM-M10 というモデルも発売されましたね。)

音質について文句はありません。

これまでの機材 (MZ-R55 + ECM-909) を基準に音質を語ってもしょうがないでしょうし、同レベルの比較対象機種を使って同じ条件で録ってみないと、ただただ「良い音」としか言いようがない、というレベルです。 他人に聞かせるのではなく、自分達が演奏の確認をするための録音なので十分過ぎます。 マイクの向きやスタジオ機材のセッティングによるところが大きいですが、思ったよりずっと良く録れています。

音質もそうですが、使い勝手が大きく向上しました。具体的なところを何点か挙げてみます。

持ち込む録音機材が PCM-D50 一つで済むようになった。
これまでは MD レコーダー (MZ-R55)、ブランクディスク数枚、マイク (ECM-909)、AC アダプターが必要でした。 これが PCM-D50 一つで済みます。 バッテリーの持ちも良いので AC アダプターなしでも安心して使えます。

練習の最中に録音メディアの入れ替えが不要
うちのバンドでは通常1回2時間の練習なのですが、MD の記録時間が限られているためどうしても途中で入れ替えなければなりませんでした。 それが録音しっ放しでおけるので気が楽です。

曲の切り出し (分割&不要部分のカット) を PC の画面上で行うことができるようになった
これまで MZ-R55 を使ってちまちまやっていましたが、PCM-D50 付属の SonicStage Mastering Studio を使って PC のディスプレイ上で波形を確認しながら切り出しができます。「分割候補点の位置編集」画面で細かく分割位置を調整できて使いやすいです。

MP3 エンコード処理が実時間でなくなった
これまでは MD → MP3 の処理は実時間がかかっていたのですが、それがなくなりました。 練習1回分が 16ビット 44.1KHz で 1Gバイト前後のファイルサイズになるので、それを SonicStage Mastering Studio に読み込むのに若干時間がかかりますが、それ以外はストレスがありません。

スタジオに行くときは PCM-D50 を機材バッグにケーブル類と一緒くたに放り込むことになるので、オプションとしてキャリングケース CKL-PCMD50 を一緒に購入しています。 このケースについては三脚用ネジ穴の1点でケースを止めるので、何かの弾みで回転して止めネジが緩んでしまうのと、電池の入れ替えが若干やりにくくなるところが気になりますが、こんなものでしょう。

PCM レコーダーについて他機種含めて購入検討中の方には、こちらのシリーズのレビューが参考になると思います。

ところで、SonicStage Mastering Studio は、PCM-D50 を購入する以前から VAIO にプレインストールされていたのですが、これが結構すごいソフトです。次回はこのソフトウェアについて書いてみたいと思います。