Groove Agent ONE でマイキットをつくろう

Komplete 7 を買ってドラム用ソフトウェア音源としては Battery 3 も手に入れたわけですが、普段使いのドラム VSTi としては Groove Agent ONE の方がお手軽だったりします。今日はそんな Groove Agent ONE を使うためのヒントをまとめます。 使用環境は Windows 版 Cubase 5.5 です。

マイキットをつくろう

プリセットを鳴らしていると、「ハイハットとスネアはいいけどバスドラはこっちのプリセットを使いたいなあ」みたいな欲求が出てくると思います。 複数インスタンスの Groove Agent ONE を起動するという手もありますが、管理面やリソースの消費を考えると一つのキットにまとめておきたくなります。

ところで、Groove Agent ONE では、パッドからパッドへのドラッグ&ドロップ操作では内容交換がされるだけでコピーをすることはできないし、ましてや複数インスタンスを起動したところで、他のキットからサンプルをドラッグ&ドロップすることもできません。 ではどうすればマイキットをつくれるかというと地道にサンプルをパッドに割り当てるのです。

Groove Agent ONE プリセットで使用されているサンプル

マイキットを作成するには、自分の欲しいサンプルを MediaBay に表示し、Groove Agent ONE のパッドへドラッグ&ドロップします。 OS のファイルシステム上では、Groove Agent ONE のプリセットで使用されているサンプルの実体は個別の .WAV ファイルではなく1つのファイルとしてアーカイブされている様ですが、MediaBay を通して参照する限りでは通常の .WAV ファイルと同様に扱うことができます。

以下の様に検索先を「VST Sound」-「Groove Agent ONE Content」として「オーディオファイル」を表示すれば、大量のサンプルが出てくるはずです。

各プリセットで使用されているサンプルファイルの名称は、以下の様に「Voice」ページの「Sample」で確認できます。

他のドラム VSTi のサンプルも使ってみよう

Cubase 5 を持っていて Komplete 7 を買ってしまった人はそれなりの数いるのではないかと思うのですが、Battery 3 や Kontakt 4 の Library のスネアやバスドラを使いたくなることもあると思います。 Battery 3 や Kontakt 4 の Library サンプルは .WAV ファイルとして存在しているので、これらの .WAV ファイルを MediaBay から Groove Agent ONE にドラッグ&ドロップすれば簡単にマイキットに組み入れることができます。

複数の種類の VSTi を起動して使うよりは全て Groove Agent ONE でサンプルを鳴らす方が管理面でもリソースの消費という点でも良いと思います。 特に Battery は「これでもか!」というぐらいの多レイヤーになっているのですが、私自身にとっては Groove Agent ONE で3層程度にした方が扱いやすそうです。

MediaBay の「ファイルシステム」でライブラリサンプルが存在するフォルダを選べばサンプルが表示されます。 私の PC では以下の場所です。

Battery 3:
C:\Users\Public\Documents\Battery 3 Library\ 以下
  「07 - ...」、「08 - ...」、「09 - ...」の配下各キットの「~Samples」フォルダ
Kontakt 4:
C:\Users\Public\Documents\Kontakt 4 Library\Band\Z - Samples\7 - Drum Kit Samples

ちなみに Komplete 7 の e-Voucher で購入した Maschine Drum Selection のサンプルの実体は .NKX という Native Instruments プロプライエタリフォーマットのファイルでした。 世の中には「NKS & NKX Kontakt Library Extractor」というものも存在するようですが、存在がグレーっぽいので試してません。 Battery と Kontakt で十分です。はい。

リバースシンバルをつくろう

ついでにリバースシンバルの作り方も書いておきます。 リバースシンバルと聞いてもピンと来ない人は下のサンプルフレーズを聞いてみてください。 最後に出てくるのがリバースシンバルですが、これはシンバルをひっくり返して再生しているのです。

作り方は簡単で、シンバルのサンプルを選んだ後、Voice ページで下図の様に「Mode = Rev」とし、必要に応じてスタートポイント (青線「s」) を調整するだけです。

操作覚書

最後に (ほとんど自分のための) 覚書です。

レイヤー追加
既にアサイン済みのパッドにドラッグ&ドロップ。 弱い音から強い音の順で。

アサイン済みパッドにレイヤー追加でなく置き換える時
Alt(Option) + ドラッグ&ドロップ

削除
ごみ箱へ。 パッド単位削除だけでなく、個別レイヤー削除も可能。

レイヤーのベロシティ分割値調整
「Layer インジケーター」(下図) の境界をドラッグ。

途中階層へのレイヤー追加
MediaBay から Layer インジケーターへドラッグ&ドロップ。

あと、Groove Agent ONE のウィンドウ右クリックで「常に前面に表示」はオフにしておくのが良いと思います。

HALionOne のもろもろ

Cubase 5 を導入してしばらく経ちますが、機能が豊富で何かすれば新たな発見があります。 さて、今回は Cubase 5 の代表的な VST インストゥルメントである HALionOne (サンプルプレイヤー) についてまとめてみます。 以下 Cubase 5 (正確には 5.5) での話となります。

GM音源として使えるか?

HALionOne はプリセットの中に GM音色を揃えてはいますが、プログラムチェンジに対応していません。 これを補う機能として、Cubase はスタンダード MIDI ファイル (SMF) を読み込む際に HALionOne のインストゥルメントトラックを作成し、トラック内のプログラムチェンジ値に相当したプリセット音色を割り当ててくれます (デフォルト設定の場合)。

しかし、プログラムチェンジデータが複数存在し、途中で音色を切り替えているようなトラックを読み込む場合は、再生時に音色の切り替えができないので正しく再生できません。 まあ、多数のトラックが使える現在では途中で音色を切り替えるようなトラックの使い方はしないでしょうから、曲作りの際は問題にならないと思いますが、昔の SMF を読み込む時は注意が必要です。

(追記:ちなみに GM サウンドを選択したいときは、MediaBay のロジカルフィルターで「"GM Sound" >= 0」とすれば一覧表示されます)

プリセット音色

Cubase 5 には HALionOne のプリセット音色が多数付いてきますが、内訳は以下の通りです。

  • 名前の最後に「VX」がついているのは HALion ONE Expression Set 01 の音色で 14 あります。 後で紹介する VST エクスプレッション機能に対応しています。
  • 名前の最初に「SR」がついているのは Sonic Reality 社製の音色 (Sonic Reality OneSoundz Silver Edition) で 45 あります。 ドラム、ベース、ギター、アコースティックピアノという感じですが、VST Sound Collection のディスクに音色を簡単に紹介する PDF (「Sonic Reality OneSoundz Silver Edition.pdf」)が入っているので見てみると良いと思います。
  • 「Yamaha S90ES Piano」というプリセットは、ヤマハのハードウェアシンセ S90ES に搭載されたものと同等のピアノ音色です。
  • その他に 643音色 (GM 128 + GM Drum 7 + Studio Set 237 + Pro Set 271) あります。 この音色数はCubase 5 シリーズ比較表に載っています。 Cubase 4 の HALionOne 音色リストが公開されていますが、ざっとチェックした限りでは Cubase 5 も Cubase 4 と同じようです。

以上の合計で 703 音色となります。 と言いつつ、「プリセットの読み込み」時の MediaBay 上は707音色と表示され、若干数が違うのですが、まあ、あまり気にしないことにしましょう。 (細かく言うと先の公開されている音色リストの GM 分が 127 しかないのも気になったりします。)

700 という数は人によって感じ方が違うのでしょうが、私は昔の人なので十分過ぎると感じます。 別途購入している M1 の 3,000超、Wavestation の 1,500超と合わせてもうお腹いっぱいな感じです。 音色の内容についていうと HALionOne はエレクトリックピアノ系の音が充実しているのが嬉しいです。

VST エクスプレッション

VST エクスプレッションは Cubase 5 の新機能の一つなので、名前を見たことがある人は多いと思います。 鍵盤を持っている人ならば以下の手順でその効果をすぐに試すことができます。

  1. インストゥルメントトラックを作成する。
  2. 「VX」が最後についているトラックプリセットを選択する。 今回は「Tenor Sax VX」を選んでみました。
  3. メニュー「VSTエクスプレッションの設定」(図の音色名「Tenor Sax」のところをクリックするとメニューが表示されます) を選ぶ。
  4. ルートを調整してキーボードで弾ける範囲にする。 ここでは、私が所有する 61鍵キーボードの最低キーに合わせて「C1」に設定します。
  5. 左手で C1~E1 のキーで効果 (アーティキュレーション) を指定しながら、右手でフレーズを弾く。 うまく設定されていれば、図のように左側の三角が指定されたアーティキュレーション (ここでは「Growl」) を指してくれます。

いかがでしょう? Sax の「Growl」や Strings の 「Tremolo」あたりは自分で弾けない人にとってなかなか重宝する音だと思います。 それを一つの音色の中で通常の音と切り替えながら使うことができるのです。

オーケストラ系の音を使ってこういうのに凝りたい人は Cubase 5 に付属してきた HALion Symphonic Orchestra 16ビット版のトライアル版を試してみると良いと思います。 気に入れば正式なライセンスは 11,000 円前後でオンライン購入できます。

というわけで、HALion One についてまとめてみました。 Cubase のエントリが続いていますが、書いておかないとすぐに忘れて思い出せなくなってしまったりもするし、仕事は最近ネタになりそうな話が少ないので、もう少し続くかも知れません。