Cubase を使った数撃ちゃ当たる作曲法

アマチュアでも何かの拍子に良いメロディが降りてくることがあると思います。 ただ、問題はそれがサビっぽいフレーズだけだったりして 1曲分を構成できるだけの量にならないことです。 なので、短いフレーズをいくつも貯めておき、さっき降りてきたサビに貯めておいた中から Aメロっぽいのと Bメロっぽいのをくっつけて 1曲にする、みたいな曲の作り方をしている人はそれなりにいると思います。 ただし、この場合も試行錯誤でいろいろな組み合わせを試さないとなかなか満足できる曲とならないかも知れません。 アマチュアの場合、まさに下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという状況ではないでしょうか。

もし、あなたがこのような作曲の仕方をしているならば Cubase のアレンジャートラックを使ってみると良いでしょう。 今回の記事ではアレンジャートラックを使って素材の組み合わせの試行錯誤を行う方法を紹介します。

スケッチ用プロジェクトを用意する

何はともあれ、まずは素材の数を増やさねばなりません。 思いついたフレーズを 1つのプロジェクトファイルに保存しておきます。 このとき、下の図のように素材を並べておきます。

メロディ+コード程度でよいですが、リズムも思い浮かんでいるのならば複数トラックを使って入れてしまってかまいません。 ただし、後で組み合わせて使うのが前提なので、調や拍子が異なる素材は別プロジェクトとした方が良いでしょう。

アレンジャートラックを追加する

Aメロ/Bメロ/サビ等の素材が複数そろったら、アレンジャートラックを追加し、図のように素材の長さに合わせたアレンジャーイベントを作成します。

アレンジャーイベントは鉛筆ツールで書いたり、左右ロケーターで区間を指定してダブルクリックしたりして作成します。 図ではわかりやすくするため、イベントを色分け (青、緑、橙) しています。

試行錯誤する

さていよいよ素材をつないでいきます。 これにはアレンジャーチェーンを使います。 これはアレンジャーイベントの進行順を示したリストで、アレンジャーモードをアクティブにすると曲の進行はトラック上のイベントの並びではなくこのアレンジャーチェーンでの並びに従うようになります。 上図のように「e」ボタンの左隣にあるボタンを押してオレンジにすればアレンジャーモードはアクティブになります。 アレンジャーチェーンの作成にはインスペクター上で作業しても構いませんし、「e」ボタンを押してアレンジャーエディターを表示して使用しても構いません。

例えば上のようなアレンジャーチェーンを作成すると「A3 → A3 → B2 → サビ1」という順でアレンジャーイベントが再生されます。 途中のイベントをクリックしてそこから再生することもできます。 アレンジャーイベントをアレンジャーチェーンに追加する方法は複数あって、イベントをダブルクリックしたりアレンジャーチェーン上へドラッグ&ドロップしたりすれば良いです。

まあ、実際の作業では並べ替えただけではなく、フレーズや構成の微調整が必要になるとは思いますが、試行錯誤をするにはアレンジャートラック機能が便利ということはわかっていただけたと思います。

ライブでも使えるよ

アレンジャートラックは、気分によって曲の構成が変わってしまうライブパフォーマンスにも活用できます。 リズムマシーン等で「パターンプレイ」と呼ばれている機能と説明すればわかりやすいかも知れませんが、アレンジャーイベントの順番をリアルタイムに指定しながら再生することができます。 次のイベントを指定しなければ現在のイベントをループ再生します。

再生するイベントの指定方法は簡単で、「アレンジャーパート」というタイトルのリスト内で再生するイベントの頭の三角を押すだけです。

アレンジャーパートリストの下の「停止」ボタンを押せば、その隣の「ジャンプモード」で指定したところまで演奏した後で終了します。 図の場合はイベントの終了まで再生して停止するので、エンディングも問題ないですね。 ジャンプモードで設定された値はイベント切り替え時にも有効です。

というわけでアレンジャートラックの活用法を紹介しました。 曲の構成を考える段階では便利に使えると思いますので、是非使いこなしてください。

Cubase 6 を買って2番目にすること

デモソングを聴こう!

「Cubase 6 を買ってまず最初にすべきこと」の続編です。 今回は何かというとデモプロジェクトの研究です。 デモプロジェクトはインストール用ディスクの以下のフォルダにあります。

\Cubase 6 for Windows\Addtional Content\Demo Projects

このフォルダにある「Cubase 6 – Live Forever」をハードディスクにコピーして「Live Forever Drums.cpr」を開きましょう。 Mac の場合はたぶん「Windows」を「Mac OS X」に変えたフォルダにあると思います。 まずは再生してビデオとサウンドを楽しみましょう。 この曲は Steinberg から YouTube 上でも公開されています。

プロジェクトの構造を把握する

このデモプロジェクトはオーディオトラックばかりなので MIDI データの打ち込み研究には使えません。 しかし、オーディオトラックに関してはかなりの部分を Cubase で音作りしているので細部を見るととても参考になります。

まず最初に見ておくべきはグループチャンネルトラックの使い方でしょう。 各トラックの出力先を把握して信号のルーティングを理解しましょう。 例えば「Bass Drum In」と「Bass Drum Out」は「Bass Drums」グループチャネルトラックに出力されています。 更に「Bass Drums」は「Drums」グループチャネルトラックに出力されています。 ドラムサウンドはこのように3段階でまとめられているので、どの段階でどのような EQ/エフェクト処理が行われているかを見ていくと面白いです。

ドラム関連

ドラムはマルチマイクで全部で 13本のマイクを使って録音されています。 バスドラとスネアについてはそれぞれにマイクを2本使っているので、人によってはこの部分だけでも楽しめますね。

音作りでは、EQ はもちろんですが、EnvelopeShaper の効果が面白いです。 私はこのエフェクトを使ったことがなかったのでとても参考になりました。

ギター/ベース関連

ギターは加工済みの音を録音しているトラックが多いですが、「Bass Guitar」と「Guitar Solo」は違います。 特に「Guitar Solo」はマルチテイクコンピング機能の使用例になっていますし、Cubase 6 の目玉である「VST Amp Rack」で歪み系から空間系までのエフェクトを使って音作りをしています。 これらをトラックプリセットとして保存すれば自分のプロジェクトで同じエフェクトを再現できますね。

ボーカル関連

ボーカルについてもバックグラウンドコーラスは加工済みトラックですが、リードボーカルについては EQ/コンプ/リバーブが Cubase の機能でかけられています。 これを聞いているとリバーブは RoomWorks で十分な気がしてきます。

更に遊ぶ

既に完成したミックスではあるのですが、自分なりにいろいろいじってみてマイミックスを作って楽しむと良いと思います。 ドラムはマルチトラックなので、スネアやバスドラの音を差し替えて遊ぶことが出来ます。 詳しくはチュートリアルビデオのチャプター8ですね。 シンセを重ねてみても面白いかも知れません。

というわけであまり巷で話題にならない Cubase 6 のデモプロジェクトを紹介してみました。 私の場合、曲そのものを結構気に入ってしまいましたが、ミュージシャンの名前がわからないのが残念です。

Cubase 6 のテンポ検出機能を使う

Cubase 6 の新機能にテンポ検出機能があります。 以前からのタップテンポ機能も使えますが、テンポの変化がない曲はテンポ検出機能を使った方が早くテンポトラック作成を終えることができると思います。 しかし、実際に使うには多少慣れが必要なので、そのへんをまとめたいと思います。

まずはやってみよう

まずは実際にオーディオ素材を使ってテンポトラックを作ってみましょう。 「ファイル」-「読み込み」で「オーディオファイル」や「オーディオ CD」を実行してトラックにオーディオファイルを読み込み、このオーディオイベントを選択します。 各トラックは「リニアタイムベース」にしておきます。
リニアタイムベース

続いて「プロジェクト」-「テンポの検出…」を選びます。 このメニューが有効化されていないときは、きちんとオーディオイベントを選択しているか確認しましょう。 下図のダイアログボックスが表示されます。
テンポ検出パネル

ここで「分析」を押すとテンポ検出が始まり、オーディオファイルに合わせたテンポイベントが作成されます。 ただし、これだけだとうまく行かないことも多いので、「倍のテンポへ」他のボタンで調整します。 テンポの大きな変化がない場合は「テンポをなめらかに」を有効にしておきましょう。 拍は 1/4 で検出されるので後で手作業で修正することになります。

うまく検出できていない部分については手作業で直しますが、テンポイベントをずらすとその新しい位置によって後続のテンポイベントの位置が再計算されます (ただし、新しい位置がツボにはまった場合のみ)。 オーディオファイルの冒頭部分を修正する場合は、方向を変えて先頭に向かって再計算させることもできます。 右下の左向き矢印を押せば先頭に向かって再計算します。 なお、テンポイベントの調整はテンポ検出パネルを表示させたまま行います。 消してしまうと再計算されません。
再分析の方向

ちなみに左下の矢印は分析結果のリセットボタンなので気をつけましょう。

後からリズム隊が入ってくる曲の場合

イントロ前半は白玉シンセパッドのみ、みたいな曲 (今回、例として使用したのは葉加瀬太郎「ひまわり」) だとイントロ部分でテンポを検出できなかったりします。 こんなときの修正方法を説明します。

まずは先程の左矢印を使って可能なところまで再計算します。 ただ、自動分析した結果が限界でそれ以上は分析できないということもよくあります。 調整できるところを全て済ませ、「もう再計算しても無駄」という状況になったら次に進みましょう。 分析できていない部分の小節を、適切なテンポを計算し手作業で挿入するのです。 なお、拍子は 1/4 のまま手順を進め、最後に 4/4 にします。

最初に必要な情報は 2番目のテンポイベントの位置です。 1番目のテンポイベントはトラックの頭にあるので、その次のイベントの位置を読むということです。 (図ではカーソルが表示されていませんが) カーソルをイベント近辺に置くと下図のように表示されます。 今回の場合は 6.647 秒の位置にあります。 テンポ検出パネルはここまでで閉じます。
2番目のテンポイベント

続いてオーディオを再生してこのテンポイベントが何拍めかを確認します。 今回は 3小節目の 2拍め (4/4 拍子) だったので、2×4+2=10拍めということになります。

続いて 1拍めの位置を確認します。 通常オーディオファイルの開始≠ 1拍めだと思いますが、この 1拍めの位置を確認するのです。 やり方としてはオーディオトラックの波形を見ながらマーカーをつけて位置を確認します。 あらかじめスナップオフしておきましょう。
1拍目の位置

ルーラーを「秒」表示にするとマーカーの位置も秒で確認することができます。 最初の拍は 0.240秒であることがわかります。
マーカー

さて、挿入する小節とそのテンポを計算します。 まず先程数えた拍数より小節は 1/4 の小節を 10小節 (=10拍分) 挿入します。 そして、最初の 1小節 (=1拍) の長さは 0.240 秒なのでテンポは、

  60 ÷ 0.240 = 250

となります。60秒間に 0.240秒がいくつあるか数えればテンポになりますね。 続く 2小節~10小節 (=9拍分) の長さは 6.647-0.240=6.407 なのでテンポは以下の通りとなります。

  60 ÷ (6.407 ÷ 9) = 84.283

ここまで計算できれば後は小節とテンポイベントの挿入をすればよいです。 まず、10小節分のテンポの挿入します。 テンポトラックの小節処理ダイアログボタンをクリックします。
小節のテンポ処理

開始:0、長さ:10、拍子:1/4 で小節を挿入します。
小節の挿入

一度だけ「処理を実行」してから「閉じる」を押します。 オーディオトラックが小節の挿入によって後ろにずれていると思うので、(スナップオンしてから) ドラッグして元に戻します。

続いて、先程計算したテンポを使ってテンポイベントの調整です。 最初 (トラックの頭) のテンポイベントのテンポを 250 にします。 続いて2小節の頭にテンポ 84.283 のイベントを新たに挿入します。 トラック上に鉛筆ツールを使ってテンポイベントを挿入してからインスペクター上で数値を修正します。
テンポ調整

ここまででイントロ部分含めたテンポトラックが作成されました。 最後に 2小節目の頭に 4/4 の拍子イベントを挿入すれば完成です。 1小節目は時間調整のための 1/4 の小節になっています。

まとめ

長い文章になってしまったので、見ると面倒くさく思えるかも知れませんが、慣れればどうということはありません。 それでも、計算するぐらいならばタップテンポを使う、というのも良いでしょう。 実際のところ、テンポの変化が激しい場合はタップテンポを使うのが現実的な気がします。

私は MIDI シーケンサー (ヤマハ QX5) からこの道に入ったので MIDI を扱う場合は最初にテンポを決めるというのが当たり前でした。 しかし、子供が Piano Diary に自分の演奏を録音して音色を変えて楽しんでいるのをみると、自由なテンポで MIDI 録音という世界もあると改めて気づかされました。 Cubase のテンポ検出やタップテンポ機能はそのような使い方の強い味方になってくれると思います。

Cubase 6 を買ってまず最初にすべきこと

チュートリアルビデオを見よう

Cubase 6 を買ったらまずはパッケージ付属の「Quick-Start Video Tutorials」というディスクをコンピュータに入れてチュートリアルビデオを見るべきです。 見ていない人もどうやらそれなりの数いるようですが、2時間程度でレコーディング&ミックスの基本から新機能まで一通りが説明され、入門用としてはもちろん経験者にも得るものはあると思います。 少なくともネットで情報を漁るよりよっぽど効率よく基本知識を得ることができます。 付属品に日本語ビデオはないだろうと無意識のうちに思い込んでしまっているのかも知れませんが、付属プログラムで視聴する限りはきちんと字幕がつきます。 .mov ファイルを直接見ると字幕はつきませんが、ゆっくりな英語なのでこれを持ち歩くという手もあると思います。

というわけで、今回はこのチュートリアルビデオの内容を紹介します。 私自身もこれ全部は一気に消化できないので、必要になったときにもう一度見るための覚書にしたのです。 これを読んで興味を覚えたところだけ見ても良いですが、時間が取れれば一通り見ておくのがお勧めです。

また、「Cubase 6 を買って」シリーズ第2弾として、付属のデモプロジェクトについても書いたので参考にしてみてください。 (2012.1.9 追記)

ビデオの内容

チャプター 1 ~ 5 が Basic パート、チャプター 6 ~ 12 が Advanced パートとなっています。

1. はじめに (Getting Started)

インストールや画面の紹介があります。 ここら辺は余裕と思いきや、「タイムライン上で左クリックし、上下にドラッグでズームイン/アウト」なんて知りませんでした。

2. 接続 (Getting Connected)

主に「デバイス設定」画面の説明です。 ASIO/VST/レイテンシーの説明があるのですが、レイテンシーについては 5ms を超えると認識できる (noticeable) と言ってました。 言い方を換えれば、リアルタイムレコーディングを使いこなす人はできるだけレイテンシーが 5ms 程度に収まるような環境をつくっておくべき、ということですね。 バスや「VST コネクション」の設定の説明もあります。

3. オーディオ録音の基礎 (Basic Audio Routing)

オーディオ録音の基本です。 オーディオを複数トラック分録音して不要部分を「ハサミ」で切って消すところまで。

4. 基本的な MIDI ルーティング (Basic MIDI Routing)

MIDI の概要説明説明から始まって MIDI トラック/インストゥルメントトラックの扱いについて説明があります。 最初は使い方がわかりにくい「Beat Designer」の使い方も説明されています。

5. ミキシングの基礎 (Basic Mixing)

グループトラック、センドエフェクト、インサートエフェクト、EQ、ファイルへのミックスダウンについて説明されています。 その中で EQ の使い方が丁寧に説明されていました。 以下のルールが紹介されていました。

  • ブーストするのではなく不要部分をカットする
  • 特殊な効果を狙うとき以外は 6db 以上のゲインは避ける。もし EQ を多くかけなければならないようなときは、マイクの種類や位置を変えてとりなおすべき。

6. オーディオ録音とプロセッシング (Advanced Audio) Part 1

オーディオ録音関連ということで以下のような内容が紹介されています。

  • トラックプリセットの選択 (メディアベイ)
  • VST Amp Rack
  • パンチイン録音
  • サイクル録音とコンピング (複数のテイクから完成トラックをつくる)
  • VariAudio 概要

7. オーディオ録音とプロセッシング (Advanced Audio) Part 2

引き続きオーディオ関連で以下のような内容が紹介されています。

  • VariAudio でボーカルハーモニー作成
  • ドラム用トラックをノートごとに分割して個別に音作りする方法 (Groove Agent One × 10インスタンス以上使用!)
  • Media Bay の使い方
  • オーディオループの扱い (ドラムループを使ってリズムトラックを作る。テンポに合わせる。ベーストラックのピッチシフト)

8. アドバンスドプロダクション (Advanced Production) Part 1

以下のような項目が紹介されています。

  • ノートエクスプレッション
  • HALion Sonic SE
  • グループ編集 (複数のトラックをまとめて編集) とその他の細かな改善点
  • 向上したヒットポイント検出 (ヒットポイントはオーディオデータにつける、タイミングを示す目印)
  • ドラムオーディオデータから MIDI ノートを作成してサンプル音に差し替え
  • オーディオクオンタイズ

9. アドバンスドプロダクション (Advanced Production) Part 2

まず、録音されたオーディオデータにテンポを合わせる方法が紹介されています。 混同されやすい以下の語句を説明していました。

クオンタイズ
イベントを動かす
オーディオワープ
グリッドに合うようオーディオイベントを伸縮する
タイムワープ
オーディオイベントに合うようグリッド (テンポトラック) が調整される

その他にも以下のような項目が紹介されています。

MIDI エフェクト
Beat Designer がさらに説明されています
アレンジャートラック
サイドチェイン
ポンピングダンスベース (バスドラのサイドチェインでベースにコンプをかける方法)
コンプレッサーのパラメータ
スコアエディタ
ボーカルオーディオデータから歌詞入りのボーカルパート譜をつくる方法 (オーディオデータ -> MIDI データ -> スコア)

ちなみに、ポンピングに似て、アナウンスが入るときに BGM を自動的に絞ることをダッキングというのだそうですが、ポンピングもダッキングも言葉を知りませんでした…。

10. ドラム、ミックス、ディザリング (Drums, Mixing and Dither)

マルチマイクで録音されたオーディオドラムトラックで「カブり」を補正するオーディオ処理が紹介されています。 また、オーディオデータにヒットポイントを設定してスライスし、クオンタイズ実行する処理もあります。

続いてミックスダウンの基本操作が説明されます。 EQ の説明が中心で「100Hz 以下はノイズしかないよ」というのが印象に残るぐらいでした。

最後にマスタリングです。 以下の2つが鉄則とのことです。

  1. クリップさせない
  2. ディザリングをかける

11. ワークフローの効率化 (Workflow)

以下のような内容が紹介されていました。

  • Control Room の設定方法 (スタジオ卓についているようなエンジニア&プレーヤー間コミュニケーションマイク&モニターセットアップ機能)
  • 5.1 サラウンド
  • Cubase を使ったライブレコーディング、ライブパフォーマンス
  • LoopMash の使い方 (スライスを Groove Agent ONE のパッドにドラッグ&ドロップで割り当てることができます)

12. 外部コントロール機器の使用 (Remotes)

以下のような内容が紹介されていました。

  • オートメーションとクイックコントロール
  • デバイスパネル
  • リモートコントロール (MIDI コントローラー) のセットアップ
  • Cubase CC121 の紹介

まとめ

いかがでしょう? これらを一通り理解できれば初心者は脱出できるぐらいの内容が含まれていると思います。 初心者の方は今売っているサンレコ7月号 に「DAW で音楽を作るための基礎用語 88」という特集が組まれているので合わせて読んでおくとよいでしょう。

あと、ビデオを見ているとよく「○○ is a Cubase 6 exclusive feature」と表示され、Artist や Elements で使えない機能はそれなりにあることが実感できます。 機能比較表を見て悩むのも良いですが、使いこなしていくつもりがあるならばやはり最上位の Cubase 6 を購入するのがお勧めです。 使い込む人にとっては値段差以上に機能の差があるはずです。

まだ「そこまでは…」という人はまずはハードウェアを買うと付いてくる Cubase AI/LE で様子を見れば良いのではないでしょうか。 また、追加プラグインを買うのは Cubase 6 付属のものを使いこなせるようになってからで良いでしょう。

サンレコ「初めての『ミックス・ダウン』集中講座」を Cubase 5 でやってみる

サウンド&レコーディング・マガジンの 2010年12月号に「初めての『ミックス・ダウン』集中講座」という特集があります。 この号にはミックス用の素材がついてきて、DAW 環境が手元にあれば自分でミックス・ダウンしてトラックを完成させることができます。 誌面では Pro Tools を用いて説明されていますが、Cubase 5 でももちろんミックス・ダウンは同様にできます。 このブログエントリは初心者がサンレコ記事を見ながら Cubase 5 でミックス・ダウンをする時に知っておきたいことのメモ書きです。 ミックス・ダウンの基本はサンレコ記事内で紹介されているので、それを読みながら Cubase を使って自分で手を動かすためのメモです。

Cubase 5.5 を前提としていますが、Studio や Essential でも操作は同じ (でたまに使えない機能があるの) だと思います。 最新版の Cubase 6 では全く同じ操作が可能です。 用いている用語は Cubase の日本語版マニュアルに合わせているので、必要に応じてマニュアルを検索・参照してみてください。 見出し中括弧書きのページ番号はサンレコ誌のものです。

最初に

まずはオーディオインターフェイスの設定をきちんとしておきましょう。 実はここが初心者にとっての最初の難関だったりするのですが、ケースバイケースなのであまり書けることはありません。 とりあえず2つだけ。

  • インターフェイス付属の ASIO 対応ドライバが選択されているか確認しましょう。
  • ミックス用途ではリアルタイム性はあまり重要でないと思うので、バッファを多めにとってノイズ発生を避けましょう。

プロジェクトの下準備 (p.76)

Cubase での操作は以下の通りです。

  1. 「新規プロジェクト」で「その他」-「Empty」を選択します。
  2. ファイルは現在のプロジェクカーソルの位置 (現在位置=縦棒の位置) に読み込まれるので、これが「1.1.1.0」の位置になっているのを確認しましょう。
  3. 「ファイル」-「読み込み」-「オーディオファイル」でサンレコ付属の DVD から素材ファイルを読み込みます。 複数ファイルを選択して読み込むことができるので一気に全部読んでしまいましょう。 また、このとき「作業ディレクトリにファイルをコピー」をチェックしておきます。これにより DVD からローカルディスクに素材がコピーされます。
    読み込み
  4. 「別々のトラックに挿入」するようにしましょう。 下図の表示には「異なるトラック」を選択します。
    読み込み

読み込んだ後はドラッグアンドドロップでトラックの位置を変えることができます。

曲として用いる区間をマーク

素材には最初と最後に余分な間が入っているので、マーカートラックを使って曲として用いる区間をマークしておくと便利です。 左/右ロケーターを曲の最初と最後に配置して「サイクルマーカーの追加」ボタンを押します (図中赤丸)。
マーカー

例えばミックスのファイル書き出し時には、このマーカーをダブルクリックすると左/右ロケーターが曲の最初と最後に移動するので簡単に準備ができます。 マーカーは使いこなすと便利な機能だと思います。 ちなみにマーカートラックがなくてもマーカーを使用することはできますが、一度作ったマーカーを削除することができなかったりします (Cubase5.5 の場合)。

時間ベースでの編集

素材を読み込んだ後シーケンスを追加する場合等は小節位置を合わせておかないと作業がしにくくなりますが、今回はただのミックスなのでテンポやビートは気にせず時間ベースで考えて作業しましょう。 以下の設定は必須ではないですが、細かい作業に踏み込む可能性があるならばやっておいた方が良いでしょう。

  • 読み込んだ各トラックをリニアタイムベースにします (次項図中赤丸)。
  • ルーラーの表示を「秒」表示にします (図中赤丸)。
    タイムベース
  • スナップはオフにした方が作業しやすいでしょう。

音量の確認 (p.77)

誌面で紹介されているベースの音量の設定については Cubase でも全く同様にメーターを確認することができます。 出力バスレベルである下図の丸印部分を -10dB に設定することになるのですが、この部分をクリックするとメーターをリセットすることができます。 (追記: 本誌を読むとわかるのですが、「VU メーターでベースが -6dB」=「DAW のピークメーターで -10dB」となるそうです。 タモリ倶楽部を見た人は VUメーターとピークメーターの違いに気をつけましょう。 もちろんこれが絶対の値というわけではないです。)
メーター

Send の扱い

FX チャンネルトラックを追加すると「チャンネル設定ウィンドウ」の Send からルーティングできるようになります。 FX チャンネルトラックもオーディオトラックと同様に「チャンネル設定ウィンドウ」を表示して設定できるので、複数のエフェクトを組み合わせたり更にどこかに Send したりということが可能です。

チャンネル設定ウィンドウ

EQ やエフェクト (Insert、Send) の設定は「ミキサー」画面か「チャンネル設定ウィンドウ」で実施することになりますが、初心者のうちは「チャンネル設定ウィンドウ」を用いるのが良いと思います。 まずはこの画面に慣れることです。
チャンネル設定ウィンドウ

特に EQ は初心者にはいろいろ難しいと思いますが、図の矢印&赤丸部分をクリックすることでプリセットを呼び出すことができるので、まずは大量のファクトリープリセットの中からそれっぽい名前のものを選ぶことから始めてみましょう。

なおインサートエフェクトの 7番目、8番目はポストフェーダーになっています。 ドラッグしてエフェクトの位置を変えることができるので、エフェクトの順序やプリ/ポストフェーダーでの違い等を手軽に試すことができます。

エフェクト

エフェクトパラメータについてはきりが無いのでここでは少しだけ。

まず Compressor について一言。 「GR」=ゲイン・リダクションのメーターがかかり具合 (減衰量) を表しているのでこれを見ながら値を決めましょう (下図赤丸)。
Compressor

また、各エフェクトには EQ 同様多くのプリセットが用意されているのでこれを活用しましょう。

オートメーション (p.82、p.86)

Cubase でもボリュームをはじめとする各種パラメータのオートメーションが可能です。 以下ボリューム操作のためのオートメーション設定例です。

  1. 下図のように操作対象トラック上で右クリック後「オートメーションを表示」を選んでオートメーショントラックを表示します。
    オートメーション
  2. 鉛筆ツール (右クリックで表示・選択) でオートメーショントラックのデータを書き込みます。 余分に書いてしまったら、矢印ツールで選択後 Delete キーで削除すれば良いです。 ドラッグして位置を直すこともできます。 操作の仕方は「オペレーションマニュアル」の「オートメーション」の章に詳しく書かれています。
    オートメーション

図中の「ボリューム」と表示されている部分をクリックするとその他のパラメータを選択することもできます。 センド量やパンの他、インサートエフェクトの各種パラメータもいじることができます。

ちなみにオートメーションをリアルタイム操作で記録するには、「W」ボタンを点灯させてトラックを再生しながらVSTi 画面や MIDI コントローラを操作します。録音時だけでなく再生時も記録することができます。 なお、「R」を消灯するとオートメーションの再生がされなくなってしまうので注意しましょう。

グループトラック

例えば複数のボーカルパートに同じ設定のエフェクトをかけたいとき、それぞれのチャンネルを設定するよりもグループチャンネルトラックを作成してまとめて扱った方が簡単です。 グループチャンネルトラックを作成すると下図のようにチャンネルの出力先としてそのグループチャンネルが表示されるようになります。 それぞれのボーカルパートで音量とパン等個別の設定を行い、共通のエフェクトはグループチャンネルの方でかける、というような使い方ができます。
グループチャンネル

なお、複数のフェーダーを1つの操作で動かすだけならば、グループトラックを使わなくても「チャンネルをリンク」することで対応できます。 複数のチャンネルを選んでコンテキスト (右クリック) メニューから「チャンネルのリンク」を選ぶだけです。 詳しくはオペレーションマニュアルの「チャンネルをリンクする」の項を参照ください。

マスタリング用エフェクト (p.87)

ミキサー画面から出力用のバス (通常は「Stereo Out」) の「チャンネル設定ウインドウ」を表示し、インサートエフェクトを設定します。 「新規プロジェクト」で「マスタリング」-「Stereo Mastering」を選んで作成されたプロジェクトは、 StereoEnhancer と VSTDynamics の2つがこの形でセットアップされます。

ミックスダウンの実行

「ファイル」-「書き出し」-「ミックスダウン」で行います。 以下の画面が表示されますが、詳細はマニュアル参照ということで。 書き出し前に左/右ロケーターの位置を書き出し区間の最初と最後に設定するのを忘れずに!
ミックスダウン

オートメーションを使っている場合は「実時間で書き出す」ようにした方が良いようです。 使用 VSTi によるかも知れませんが、実時間で行わないとトラック再生時とミックス時で出力結果が変わることがありました。

最後に

誌面連動のミックスダウン・コンテストが 12/31 締め切りで実施中です。 今からでも間に合うので Cubase をお持ちの方は是非サンレコ誌を買って手を動かしてみてください。


2011.5.21 追記
若干追記しました。 最新バージョンは Cubase 6 となりましたが、こちらでも同じように操作できます。

VSL KONTAKT Orchestra のキースイッチと Cubase VST エクスプレッションマップ

Kontakt 4 「Orchestral」コレクションのアーティキュレーション

Kontakt 4 ライブラリにはあの有名な「Vienna Symphonic Library (VSL)」の Kontakt 向けバージョンである VSL KONTAKT Orchestra が含まれています。 「Orchestral」コレクションに含まれているストリングス等がそれです。 と言いつつも私はその VSL がどれぐらい有名なのかわかっていないのですが、オーケストラ楽器を弾くことができない私としてはストリングスセクションのプリセットを使いこなせるようにしておきたいところです。

ストリングスの使いこなしでやはり重要なのは様々なアーティキュレーションの使いこなしでしょう。 今時のサンプリング音源ではアーティキュレーションごとに録音したサンプルを使い分けて演奏ができるようになっています。 昔は打ち込みテクニックで表現し分けていた様な気がしますが、それに比べたらずっと自然な演奏になるでしょうし、打ち込みもしやすいです。

この Orchestral コレクションでアーティキュレーションを使い分けた演奏を行うにはキースイッチ、すなわち MIDI のノート信号でアーティキュレーション切り替えを行います。 例えば「Violin Solo」というプリセットでは C0 ~ F0 という低い鍵盤が標準キースイッチに用いられます。

加えて「Dynamic KS」ボタンが点灯している状態 (デフォルト) では、標準キースイッチから更に1オクターブ下の C-1 ~ F-1 が「Dynamic KS」という、既に発音中のノートのアーティキュレーションを切り替えるためのスイッチになっています。 画面上のキーボードで確認して、レッドが標準キースイッチ、シアンが Dynamic KS になります (Dirigent の参考記事)。 かなり下の方なのでこのままだと鍵盤数の少ない MIDI キーボードでは入力できないかも知れません。

標準キースイッチと Dynamic KS の動作を比較すると以下のようになります。 Dynamic KS は後からノートオンした音符に対して効果がないので注意が必要です。

標準 Dynamic KS
発音中ノートに対しての効果 なし あり
KSオン後に発音したノートに対しての効果 あり なし

後述で説明する通り、VST エクスプレッション機能と組み合わせる場合は標準キースイッチの方を使用します。

Cubase 5 の VST エクスプレッション

Cubase 5 には「VST エクスプレッション」という機能があります。 これは複数のアーティキュレーションを持つサウンドを扱いやすくするための機能です。

Kontakt の Orchestral のケースを考えた場合、アーティキュレーションをつけた演奏を打ち込む場合は、発音のためのノートの他にキースイッチ用のノートイベントを一緒に入力することになります。 VST エクスプレッション機能を使うと、これがアーティキュレーションを付けたノートイベントを入力するという形に変わります。 例えばスコアエディタを使って音符に演奏記号を付けると、それに応じたサウンドに切り替わって再生されます。

つまり VST エクスプレッションを使わなくても Orchestral サウンドのアーティキュレーション切り替えはできますが、使った方が扱いやすくなるということです。 また、Orchestral ではキースイッチ用の鍵盤が低い位置にありますが、VST エクスプレッションマップを作っておけばキースイッチの音域移動も手軽になります。

VST エクスプレッションマップの作成

というわけでエクスプレッションマップを作成手順を説明します。 Orchestral コレクションの中でもサウンドによって使用可能なアーティキュレーションの種類は異なるので、それに応じたマップを作らねばなりません。 そのうち Violin、Viola、Cello は同じアーティキュレーション設定になっているので、まずはそれ用のエクスプレッションマップを作ってみます。

ちなみに本家 VSL 用のエクスプレッションマップはスタインバーグのサイトよりダウンロード可能なのですが、Kontakt 版は本家版に比べてアーティキュレーションの種類がぐっと少なくなっていてキースイッチ割り当ても異なっているので、そのまま使うことができません。

設定手順の概要は以下の通りです。

  1. MIDI トラック or インストゥルメントトラックのインスペクターより「VST エクスプレッションの設定」を選びます (下図)。
  2. 表示された「VST エクスプレッションの設定」ウィンドウの左上「エクスプレッションマップ」の下の「+」で新たなマップを作成します。
  3. 「出力マッピング」のところの「#1 キースイッチ」に切り替え用キースイッチを入力します。 また「サウンドスロット」のところで名前や対応するアーティキュレーションを設定します。
  4. 「サウンドスロット」の「+」でサウンドスロットを追加し、設定を繰り返します。

いくつか設定のポイントを説明します。

  • 複数のアーティキュレーションを組み合わせて使うような場合はグループを複数使用することになるのですが、Orchestral では単純な切換えなので、全てのアーティキュレーションを同一のグループに設定しておきます。
  • 「出力マッピング」で「#1 キースイッチ」に Kontakt のキースイッチ用ノートを設定していくのですが、このとき標準キースイッチ (C0 ~ F0) を割り当てます。 各エディターでアーティキュレーションを付加すると、再生時はアーティキュレーション切換え用ノートが送られてから発音用ノートが送られます。 したがって、Dynamic KS では効果がつきません。

というわけで設定が終了するとプロジェクトウィンドウのインスペクターが以下のようになります。 C1 ~ F1 のキーを押しながら普通の鍵盤で音を出すと効果を確認することができます。

実際のエクスプレッションマップ作成に際しては、全て一から作るのではなく既に存在するマップに修正を加えるやり方で良いと思います。 さきの VSL 用をベースにすることもできますし、HALionOne の「Large Strings VX」等「VX」系のトラックプリセットを参考にしても良いでしょう。 各エディターでのアーティキュレーション入力についてはオペレーションマニュアルの「VST エクスプレッション」の章に詳しく説明されているので参照してみてください。

Cubase を使って好きな曲のコピー

この頃、DAW の練習として自分の好きな古い歌のコピーをしています。 スコアを買ってきたとしても結構いい加減なものが多いので、コード進行を参考にする程度でひたすら耳コピをすることになるですが、今日はその手順を簡単に紹介します。

コピー元 CD からのインポート

新規プロジェクトを作成した後、「ファイル」-「読み込み」-「オーディオ CD」を選んで、コピー元の曲を読み込んだオーディオトラックを作成します。 CD 以外の音源を使う場合は「読み込み」-「オーディオファイル」ですね。

テンポトラックをつくる

編集をやりやすくするために、小節位置を先に読み込んだ CD 音源に合わせておきます。 具体的には、タップテンポ機能を使用してテンポトラックを作成します。

それとトラック毎にミュージカルタイムベース/ リニアタイムベースの設定は使い分けます。 これはもろもろの処理に音楽的な小節を基準にするか絶対的な時間を基準にするかの切換えです。 打ち込み用トラックはミュージカルタイムベースになるでしょうが、特にテンポの変化する曲では手弾きのオーディオトラックをリニアタイムベースとした方が扱いやすいかも知れません。 CD 音源再生用オーディオトラックやタップ用の MIDI トラックはリニアタイムベースにしておかねばなりません。

再生用ツールの準備

耳コピで重要なのは CD 音源の再生方法だと思います。 テンポを落としたり、フィルターをかけたりできる再生ツールを使うのが効率的ですが、最近私はこの用途に Guitar RIG 4 Pro を使っています。

Cubase のエフェクトトラックとして Guitar RIG 4 を立ち上げ、先ほどのインポート時に作られた .WAV ファイルを TAPEDECK に読み込みます。エフェクトトラックにアサインすることで、Cubase の出力ルーティングの中に取り込むことができ、作成しているトラックと同じ環境で TAPEDECK の再生をモニタリングすることができます。

TAPEDECK はピッチを変えずにスピードを遅くして再生することができます。 トラックの再生と同期するわけではなく、独立した再生ツールとして使ってその出力が Cubase に取り込まれるという使い方になります。

更に特定の帯域をとりだすために Pro-Filter コンポーネントを Guitar RIG のラックに入れ、場合によっては左右の片チャンネルのみ再生するために Split コンポーネントを使います。 これらは無償版の Guitar RIG 4 Player でも使用可能なコンポーネントばかりなので、耳コピ用の再生ツールがない方は一度試してみると良いと思います。

ひたすらコピー

後はひたすらコピーしていくだけです。 自分の演奏や打ち込みデータを CD 音源トラックと同時に再生して、気持ち悪いところがないかを確認していきます。 パンを振って左右で違いがないか確認するのも良いでしょう。

コピー譜をつくる

私にとってまだこれからの課題なのですが、スコア機能を使って譜面をきちんとつくっておきたいと思っています。 スコア作成には再生用トラックとは別に譜面用の MIDI トラックを作って管理して行くことになりそうです。

まとめ

多分耳コピは慣れだと思うのでまずはやってみることです。 「Cubase 買ったけど何したら良いかわかんね」というような人は好きな曲のコピーから始めてみてはいかがでしょう? スコアを買ってきたとしてもそれを鵜呑みにせず、自分の耳でエフェクト等含めて完コピを目指すのがポイントです。

きちんとコピーできると気持ちよいし、各パートの構成やエフェクトなど色々勉強になります。

Cubase 5: 外部 GM 音源の活用とスタンダード MIDI ファイル

先のエントリで書いたように HALionOne はプログラムチェンジに反応しません。 ですので、GM 音色を持つ標準 VSTi が HALionOne しかない Cubase では、スタンダード MIDI ファイルを読み込む動作の初期設定は、 MIDI ファイル内の (最初の) プログラムチェンジ値に応じた HALionOne のプリセットをアサインしたトラックを Cuase が作成するという動作になっています。

今回のエントリはその読み込み動作では満足せず、スタンダード MIDI ファイルを Cubase で再生するときは手持ちの外部音源を使いたい、そのために必要なマルチイン/マルチアウトのオーディオインターフェイスも持っている、という (奇特な?) 人向けの設定手順です。 Cubase 5 では外部音源も必要な設定を行えば VST インストゥルメントと全く同様に扱うことができます。

読み込み前の設定

このあたりはマニュアルを読めばわかると思うので簡単に済ませます。 (オペレーションマニュアルの「VSTの接続:入出力バスの設定」の章の「外部インストゥルメント/エフェクト」と「MIDI デバイス」の章あたりです)

  1. 「MIDI デバイスマネージャー」で MIDI デバイスを追加します。 手持ちの MIDI 音源の型番が見当たらなくても「GM Device」があるので問題ないでしょう。 GS がなくて「XG Device」があるのはやはりヤマハ子会社の Steinberg という感じですが、よく見ると「SC-88 Pro」等があったりします。
  2. 「VST コネクション」で 1. の MIDI デバイスと関連付けした外部インストゥルメントを追加します。 2チャンネル分のオーディオ入力を外部 MIDI 音源のために使うことになります。 オーディオ録音をしない人は 2イン/2アウトのオーディオインターフェイスを使うというのもありかも知れませんが、外部インストゥルメント/エフェクトを使い始めるとやはりマルチイン/マルチアウトのものが欲しくなりますね。
  3. 「環境設定」の「MIDI」-「MIDI ファイル」で「インストゥルメントトラックに読み込む」のチェックをはずします。 これで MIDI ファイルを読み込んだ時は HALionOne のインストゥルメントトラックではなく、MIDI トラックとして読み込まれるようになります。

MIDI ファイルの読み込み

  1. 再生したいスタンダード MIDI ファイルを読み込みます。 MIDI ファイルを読み込む際に「新規プロジェクトを作成しますか?」と聞かれた場合は「作成」と答えます。 新規プロジェクトとして読み込まないとテンポ (と他にもあるかも) が反映されません。
  2. 「VST インストゥルメント」ウィンドウを操作して先程作成した外部インストゥルメントを追加します。 簡単に言えば VSTi のラックに表示させるということです。
  3. 読み込んだ各 MIDI トラックの出力先を MIDI デバイスマネージャーで設定した MIDI デバイスにします。 このように複数のトラックの MIDI 出力先に同じデバイスを設定することが可能です。 ここで Tips ですが、読み込んだ全ての MIDI トラックを選択して、Shift + Alt (Mac は Option らしい) を押しながら出力先を切り替えると複数の出力先を一度に変更することができます。

まあ、別に GM 対応の VSTi を持っていてそれで間に合うのであれば全然かまわないし、そもそも「今更 GM やら MIDI ファイル再生が必要か?」という話もあるかも知れません。 ただ「GM 音源として」というのは使い道の一つでしかなくて、Cubase 5 使いで自分の使ってきたハードウェアシンセの音に愛着がある人はマルチイン/マルチアウトのインターフェイスを手に入れると幸せになれるのではないかと思います。

とりあえず自分の使っているUA-101をお勧めしておきます。 IEEE 1394 版の FA-101 とか、足りるならば6イン/6アウトの FA-66 等も良いと思います。

Cubase でゲートリバーブ

VSTi レイヤーの件に続き、Cubase 5 の標準プラグインを工夫して使ってみようという話です。 といっても先の話と比べたらこちらはほとんど一発ネタなのですが、Cubase 5 でゲートリバーブの音を得るための設定手順です。 ゲートリバーブと言えばスネア用の (昔の?) 定番エフェクトで、私が持っているアウトボードのリバーブにはかならずゲートリバーブのモードがあるのですが、Cubase 付属のリバーブにはそんなモードは無かったりします。

というわけで、Cubase ではリバーブ+ゲートという2つのエフェクトの組み合わせでゲートリバーブの音を出します。 Cubase 5 ではリバーブは3種類ありますが、どうせぶった切るので一番負荷の少ない Roomworks SE を使用するのが良いでしょう。

以下設定手順です。

  1. FX チャンネルトラックを追加します。 エフェクトとして「Roomworks SE」 を選びます。
  2. 1. で作成した FX チャンネルトラックのチャンネル設定ウィンドウを開き、Roomworks SE の次に「Gate」を入れます。 (ここでは FX チャンネルトラックの名前を「GatedReverb」に変更しています)
  3. 最終的にプリセットは好みのものを選べば良いと思いますが、私が試した中でソレっぽかったのは、 Roomworks SE が「Bright Plate Reverb」、Gate が「Drum Room Only」の組み合わせなのでまずはこれを使ってみてください。 (もちろんプリセットに頼らず一から設定しても良いですが、そんな人にこんな記事は不要でしょう)
  4. Roomworks SE の Mix を 100 にします。
  5. これで FX チャンネルトラックの準備はできたので、エフェクトをかけたいチャンネルのセンド (Sends) にこの FX チャンネルトラックを設定します。
  6. エフェクトのかかり具合を聴きながら、Gate の Threshold と Release を調整します。 Threshold の値を高くしたり、Release を小さくすればリバーブ音は短くなります。 Gate は「リバーブ音量が Threshold まで減ったら Release 時間後0になる」という動作をします。 (プリセット「Drum Room Only」では Hold= 0 なのでこうなります)

いくつか補足です。

  • 「MIDI Gate」プラグインを使って、MIDI のノートオン/オフによりゲートをかける方法もあると思いますが、打ち込みのドラム用に使う場合はベロシティを揃えることができるので、普通のゲートでやった方がお手軽な気がします。
  • せっかく作ったゲートリバーブは他のプロジェクトでも使えるようにトラックプリセットにして…、と書こうとしたのですが、FX チャンネルトラックはプリセット保存できないのですね。 個別のエフェクト設定で保存するしかない、ということのようです。
    せっかく作ったゲートリバーブは他のプロジェクトでも使えるように「インサートプリセット」として保存しましょう。 下図のようにプリセット管理メニューを出して「プリセットの保存」を選びます。
  • スネアのみにかけたい時は、VSTi からパラアウトさせる必要がでてきますね。 そんな時にはこちらの記事をどうぞ。

標準 VSTi の音がショボイと感じたら複数の音色を重ねてみよう

Cubase 5 で「レイヤー」

私自身は Cubase 5 付属の VST インストゥルメント (VSTi) の出来に結構感動しているのですが (VST 5 の USM なんてひどかったもんね!)、世の中には付属 VSTi の音では満足できない人が相当数いるようです。 恐らくそのような感想を持つ人の大多数はプリセットから音色を選ぶだけになっているのではないかと推測するのですが、実は難しい音色エディットをしなくても、音を重ねてちょっと工夫するだけでプリセット音とは一味違うサウンドをつくることが可能だったりします。

というわけで、ここでは一つのトラック内で複数の VSTi を重ねて鳴らす方法を説明します。 シンセ関連用語で「レイヤー」というやつです。 お金の力に任せてサードパーティ製 VSTi をガンガン買い揃えるのも素敵ですが、お金がなくてもセンスと工夫で何とかしてみましょう、というのが今回のテーマです。

実際の操作

ここでは Cubase 5 の標準プラグインを用いて Mystic + HALionOne × 2 を重ねる例で説明します。

  1. 「VST インストゥルメント」ウィンドウを表示し、必要なインストゥルメントを選択します。 Mystic については「プラグイン "Mystic" を割り当てた MIDI トラックを作成しますか?」に「作成」と答えて MIDI トラックを合わせて 作ります。 HALionOne については、新たな MIDI トラックは不要なので「キャンセル」を選んでおきます。
  2. ここまででプロジェクトウィンドウ上には VST インストゥルメントチャンネルが3つ、MIDI トラックが1つできているはずです。 それぞれの VSTi で好きな音色を選んでおきます。
  3. (表示されていない場合は) MIDI トラックのインスペクターに「MIDI センド」を表示します。
  4. MIDI トラックの「MIDI センド」で、2つの HALionOne に接続するよう設定します。 Mystic については MIDI トラックの出力先として割り当てられているはずなので、「MIDI センド」で設定する必要はありません。
  5. この状態で MIDI トラックを選択し、MIDI 信号を送れば3つの VSTi の音が重なって鳴るはずです。

ここまでできれば、後は音色間のレベルやパンを調整したり、好きなエフェクトをかけたりしてサウンドを整えていきます。

(2012年12月追記: この他にトラック間で共有コピーする方法もあります。Shift 押しながらコピーするやつです。サポートブログで紹介されていました。)

音作りのヒント

音作りのヒントをいくつかざっくばらんに書きます。

  • 定番は減衰系 (ディケイ系) と持続系 (サスティン系) の組み合わせなので、初めての人はまずそこから始めると良いと思います。
  • 音色によってはオクターブ上げ (下げ) てから重ねたい時があると思います。 そんな時は「MIDI センド」の設定で、「MIDI Modifiers」をかませて「移調」の値を調整します。
  • 「MIDI Modifiers」の「範囲」「ノートフィルター」をうまく使えば、レイヤーだけでなく「スプリット」も可能です。
  • 特にリバーブ系のエフェクトについては VSTi そのもののエフェクトはオフにして最後にまとめてかける方が音がなじむでしょうし、パフォーマンス的にも良いと思います。 これをするにはグループチャンネルトラックを作成し、各 VST インストゥルメントチャネルの出力先をこのグループチャネルトラックにした上で、グループチャネルトラックにリバーブをかけます。 グループチャネルトラックにまとめておけばボリュームコントロール等何かと便利だと思います。
  • 2つの減衰系の音を混ぜずに重ねたいときはパンを調整して片方にショートディレイをかけると良いかも知れません。
  • お気づきの通り、VSTi を重ねればその分 CPU パワーをを消費します。 Cubase には CPU 消費を抑えるために「インストゥルメントフリーズ」という自動オーディオファイル変換機能がありますが、「MIDI センド」先として設定している VSTi の再生をフリーズさせる方法は無いようです。 パフォーマンス的にどうしようもなくなってきたら手動で「オーディオミックスダウンの書き出し」をするしかなさそうです。
  • 最後にもう一つ、同じ音色でも単体で聞いたときとオケの中に入ったときでは印象が変わることが多いということを付け加えておきます。 Cubase を使う人は音色でなく曲をつくる人だと思うので、リッチな音よりも曲の中で役割をしっかり果たす音を狙う方をお勧めしておきます。