NI Reaktor の音色プログラム管理

概要

Reaktor (Reaktor 5.5 を想定) ではサウンドパッチ/プログラムのことをスナップショット (Snapshot) と呼びます。 スナップショットにはインストゥルメントレベルのものとアンサンブルレベルのものがあります。 インストゥルメントレベルのスナップショットはインストゥルメントヘッダーで選択することができます。
Instrument Header

サイドペインのスナップショットタブではインストゥルメントだけでなくアンサンブルのスナップショットも選択できます。 スナップショットタブではまずどのインストゥルメント/アンサンブルのリストを表示するか選ぶ必要がありますが、Linked ボタンを押しておくと、パネルビューやストラクチャービューで選択したイントゥルメント/アンサンブルのリストに自動的に切り替わります。
Snapshot tab

メインツールバー上のスナップショットリストには「Snapshot Master」となっているインストゥルメント/アンサンブルのリストが表示されます。
Main Toolbar

128個のスナップショットが 1バンクとして管理され、各インストゥルメント/アンサンブルは最大 16バンク持つことができます。

基本操作

スナップショットをバンクに保管するための手順は以下の通りです。 Store ボタンはスナップショットタブの下部にあります。 (この記事ではバンクにストアすることを「保管」、ファイルにセーブすることを「保存」というように言葉を使い分けます。)

  1. Store ボタンを押す。
  2. 必要に応じて名前を変更する。
  3. もう一度 Store ボタンを押す。

2度めのボタンを押す前であれば、Esc キーで操作をキャンセルすることができます。 Append や Insert は最初の空きスロットに入れたり、選択しているスナップショットの直後に挿入して保管するためのボタンですが、これらも操作を確定するには2回押す必要があります。

Append 操作を行った時、現在のバンクが一杯のときは次のバンクに保管してくれます。 16バンクを使い切る前であれば、必要に応じ新規バンクを作るかどうか聞いてくるので、新規音色を作成した場合は Append ボタン操作がお手軽だと思います。

ファイルへの保存

バンクにストアしただけでは Reaktor を終了すると消えてしまうので、作成したスナップショットは OS のファイルとして保存しなければなりません。 アンサンブルファイル (.ens) として保存した場合はスナップショットも含めて保存されます。 Reaktor の場合、アンサンブルファイルを用いてシンセの構造と合わせてスナップショットを管理するのが間違いが起こりにくいと思いますが、やろうと思えば、スナップショットのみをスナップショットバンクファイル (.ssf) として保存することもできます。 名前の通り、保存はバンク単位に行われます。

この操作はスナップショットタブのメニューより、「Edit」-「Save Bank」を実行します。 読み込みもここの「Load Bank」で行います。
Menu

ちなみにスナップショットを削除する場合もこちらのメニューから「Delete selected Snapshots」ですね。

MIDI での切り換え

MIDI プログラムチェンジでスナップショットを切り替える場合は、「Recall by MIDI」がチェックされている必要があります。 プログラムチェンジ 0 ~ 127 でスナップショットバンクのスロット 1 ~ 128 に対応します。 この対応は変更する機能は無いようです。

複数インストゥルメントを含むアンサンブルの扱い

デフォルトではアンサンブル中の各インストゥルメントのスナップショットは個別管理となっていて、保管や呼び出しはそれぞれのインストゥルメントで行わなければならないです。 複数のインストゥルメントで一つのサウンドを作っている場合、まとめて保管したくなると思います。

そのような時は、子インストゥルメントで「Store by Parent」をチェックしておくと、親 (Parent) のスナップショットと合わせて子インストゥルメントのスナップショットもストアされます。 ここで言う親とは文字通りの意味で、インストゥルメントの中にインストゥルメントを作った場合の親子関係のことを指しています。 また、アンサンブルは全インストゥルメントの親ということになります。 この項目はプロパティタブの Function ページにあります。

このとき気をつけなければならないのは、バンクにストアするときに親のバンクだけでなく、子のバンクも同じ名前に書き替わることです。 この動作を考慮すると、子インストゥルメントのファクトリープリセットを組み合わせて作ったような音色であったとしても、今のバンクスロットを書き替えてしまうより Append で空きスロットに入れていく方が管理しやすいように思います。

また、同じページにある「Snapshot Master」にチェックをつけたインストゥルメント/アンサンブルはスナップショットマスターとなります。 スナップショットマスターが持つスナップショットのリストは、プラグインとして動作するときのホスト上のプログラムリストやメインツールバー上のスナップショットリストとなります。

というわけで複数のインストゥルメントを持つアンサンブルでは以下のように設定し、アンサンブルレベルのスナップショットで音色管理するのがお勧めです。

  • アンサンブルについて「Snapshot Master」と「Recall by MIDI」をチェック
  • 各インストゥルメントについて「Store by Parent」と「Recall by Parent」をチェック

このように設定すれば、アンサンブルのスナップショット操作を行うと全てのインストゥルメントのデータが保管/読み込みされることになります。 ちなみに、「Recall by Parent」をチェックし忘れると、アンサンブルの音色切り替え時に子インストゥルメントのスナップショット名は変わっているけれど、音色が切り替わっていないという状態になってしまいます。

スナップショットの中身

スナップショットは情報としてパネルコントロール (フェーダー、ノブ等) と MIDI コントローラー (MIDI イベントとの紐づけ) の設定値を持っています。 簡単に言うと、各部品の設定値を読んだり書いたりしているということです。

各パネルコントロールのプロパティ (Function ページ) を確認すると「ID for Files」という ID があります。 この ID に紐づいて設定値が保存されるので、これを変えてしまうと保存してあるスナップショットの値を正しく読めなくなります。

また、同じページにある「Snap Isolate」をチェックするとこのパネルコントロールの情報はスナップショットに含めないようになります。 一時的で保存する必要のない情報を持つコントロールについてはここをチェックします。

まとめ

これでスナップショットの基本はこなせたと思いますが、全てではありません。 他にも、コンペア機能の他、スナップショット間のモーフィングだとかランダムだとか楽しそうな機能もあるので、興味があれば「Application Reference」マニュアルを読んでみましょう。

同様に最近の一連のエントリで Reaktor の基本操作はできるようになるかも知れませんが、説明できていない機能はたくさんあります。 それでもここまででパッケージ付属のインストゥルメントを活用するための基礎知識は何とかカバーできたように思いますので、後は必要に応じ製品付属マニュアルを読んでいただければと思います。 とりあえずは「Getting Started」マニュアルですね。

国内 Reaktor ユーザが増えることを願いながら、Reaktor に関しては今回で一区切りつけます。

Reaktor で複数シンセのレイヤー作成

複数のシンセ音色を重ねて1つにする「レイヤー」は、手軽にできる割に効果の大きい初心者向き音作り手法の一つです。 以前、Cubase 上で VSTi をレイヤーするセッティングを紹介しましたが、今回は Native Instruments Reaktor の中で複数インストゥルメントを重ねてみます。 このような記事を読んでいる方は恐らく初心者だと思うので、前回の Reaktor の基本事項の説明も合わせて読んでみてください。

作成する Ensemble の概要

アナログタイプと FM シンセの組み合せということで、SoundSchool Analog と FM4 の2つのシンセ Instruments のレイヤーを作ってみます。 また、ミキサー Macro を使いますが、Macro レベルでは操作パネルを持つことができないので、空 Instrument に Macro を追加します。 したがって、以下の3つの Instruments で構成される Ensemble を作成することになります。

  • SoundSchool Analog
  • FM4
  • ミキサー

ちなみに Instrument と Macro を比べると、Macro はパネルを持てない他、スナップショットや MIDI/OSC の設定も単独では持つことができません。

インストゥルメントの配置と接続

「File」-「New Ensemble」を選び、新規アンサンブルを作成します。 ストラクチャビューを表示し、一番上の階層 (下図) に移動します。 上の階層に移動するには、何もないところでダブルクリックか、コンテキストメニューの「Parent」でしたね。
structure view 1

コンテキストメニューから以下のようにメニュー選択して2つのシンセとミキサーをインサートします。

  • 「Instrument」-「Synthesizers」-「SoundSchool Analog」
  • 「Instrument」-「Synthesizers」-「FM4」

オーディオ入力と初期 Instrument の間のワイヤーを削除し、位置を整理すると以下のようになります。
structure view 2

初期 Instrument の名前を「Mixer」と変更しましょう。 サイドペインのプロパティタブで変更できます。
instrument name

ついでに Ensemble の名前も「My Layer」に変えておきましょう。 ストラクチャービューの何もないところをクリックするとプロパティタブには Ensemble のプロパティが表示されます。

続いて、2つのシンセ Instruments と Mixer Instrument の間をワイヤーで結びましょう。 ANALOG と Mixer 間を結んでしまうと、Mixer の空きポートがなくなってしまいますが、心配はいりません。 FM4 の出力ポートから Mixer の「…」へ Ctrl を押しながらドラッグするとポートが増えるのです (ダイナミックポート)。 ここまでで以下のようになります。
structure view 3

ここで2つのシンセ Instruments の同時発音数や MIDI の設定が同一になるようにします。 具体的には、FM4 のプロパティタブ - Function ページ - Voice Allocation メニューで「Voice & MIDI slave to」を「ANALOG」に設定します。 これにより、FM4 のポリフォニックボイスと MIDI の設定は SoundSchool Analog の設定を引き継ぐことになります。 「Voice & MIDI slave to」はレイヤー時に便利な設定です。
voice allocation

ちなみに MIDI の設定は Instrument プロパティの Connect ページで行います。 シーケンサー Instrument とシンセ Instrument を接続するときはこのあたりの設定が必要となります。

Mixer マクロの追加

Mixer Instrument をダブルクリックしてこれの内部構造を表示します。
structure view 4

コンテキストメニューより以下を選択して Mixer マクロを追加します。

  • 「Macro」-「Classic Modular」-「02 Classic Modular – Mixer, Amp」-「Mixer – Simple – Stereo」

入力ポートをきちんと整理して配置し、Mixer マクロにつなぎます。 ポートの名前もわかりやすいよう変更しておきましょう。

前回の記事を思い出して欲しいのですが、Instrument の入出力ポートはモノフォニックです。 なので、Mixer はモノフォニックモードで動かせば十分です。 「Audio Voice Combiner」モジュール (「}」表示) は不要なので削除し、Mixer と出力ポートを直結し、Mixer をモノフォニックモードに設定します。 Mixer の右下ランプがオレンジになりましたね。 ここまでで以下のようになります。
structure view 5

パネルビュー

さてここでパネルビューに切り替えましょう。 各 Instruments が横に並んでいるかも知れないので、ドラッグして縦に並べておきます。 ミキサーもここから操作できます。 FM4 と SoundSchool Analog のスナップショット (パッチ) を切り替えてミキサーでバランスを取ってみましょう。
panel view

まとめ

というわけで、シンセのレイヤー構成ができました。 「Save Ensemble As」でアンサンブルファイルを保存しておきましょう。 正直言って自分としてはこの程度 Reaktor がいじれれば十分という気がしています。 自分でシンセをデザインしても、パッケージ付属のものより良いものができる気はしないですし。

とは言っても、Instruments を組み合わせて使うにも前回の記事程度のことは知っておくべきでしょう。 シーケンサー+シンセの組み合わせは「Getting Started」マニュアルに載っているので興味があれば読んでみてください。 次回は作成したサウンドを保存する機能、スナップショットについてまとめて一旦 Reaktor の話は終わりにしたいと思います。

Reaktor でマイシンセ作っちゃう?

前回に引き続き Native Instrument Reaktor 5.5 を使います (既に最新版は 5.6 になっていますが、まだアップグレードできていません)。 今回は Reaktor でマイパッチを作るだけでは飽き足らず、「マイシンセ作っちゃうよ!」という野望をいだいている人向けです。 パッチを作るのとシンセを作るのは次元の違う話なのですが、一応前回に続けて読めるようには書いてみますので、シンセ初心者でも興味のある方は読み進めてみてください。

良く使うボタン等

最初にタブ・ボタンを説明しておきます。 全部説明するとなると大変なのですが、かと言って使うものだけっていうのも中途半端だったりするので、サイドペイン (左画面) のタブとサイドバー (マニュアル読んでも「サイドバー」と呼び方が確定しているか微妙な感じですが) 上方のボタンを一通り説明します。 まずは、サイドペインのタブの一言説明です。 左からの順番で、太字は今回使用するものです。

1. Browser タブ
ファイルブラウザ
2. Snapshot タブ
スナップショット (音色パッチ)
3. Panelsets タブ
パネルセット (表示パネルの選択)
4. Properties タブ
プロパティ

続いて、サイドバー上のボタンの一言説明です。 上からの順番です。

1. Panel ボタン
パネルビュー (シンセ等の操作画面)
2. Structure ボタン
ストラクチャービュー (シンセ等の内部構造画面)
3. Panel Split ボタン
パネルビュー+ストラクチャービュー
4. Structure Split ボタン
2つのストラクチャービュー
5. Split Orientation ボタン
縦分割/横分割切り換え
6. Panel Lock ボタン
パネルの編集可否切り換え
7. MIDI Learn ボタン
Reaktor コントロールに MIDI コントロールチェンジを割り当てるためのボタン

ストラクチャービュー

Reaktor の凄さはストラクチャービューを見るとわかります。 前回の手順で SoundSchool Analog をロード後、Structure ボタンを押してストラクチャービューを表示してみましょう。

ここで「ANALOG」と名前のついた四角形 (オブジェクト) をダブルクリックしてみましょう。

ずいぶん細かくなりました! これが SoundSchool Analog の内部構造です。 何と Reaktor ではこの内部構造をいじることができるのです!

更に「LFO」オブジェクトや「Filt-Env->Osc」オブジェクトをダブルクリックすればそれらの内部構造が表示されます。 上位の階層に戻るには何も無いところでダブルクリックします。 コンテキストメニュー (「Structure」で下位、「Parent」で上位) を使うこともできます。 階層をあっちこっち移動してみるといじりたくなって来ませんか?

Reaktor の階層構造を知ろう

まず Reaktor で使用できるオブジェクトの階層を知っておきましょう。 Reaktor ではアンサンブル (Ensemble) が最上位概念で、通常 OS ファイルへのセーブ/ロードはアンサンブル単位で行うことになります。 インストゥルメント (Instrument) はその下の概念で、Reaktor には最初から 70種類以上の Instruments がついてきます。 これらはシンセ/エフェクター/シーケンサー等です。 先のエントリではそのうちの一つ SoundSchool Analog を使いました。

下の図が示すように、Instrument の下にも様々な階層の部品があります。 全部ひっくるめて「オブジェクト」という言い方もします。


REAKTOR 5.5 – Application Reference p.21

図を見ていると何故 Core Modules 系統とただの Modules (Primary Level Modules と言います) の2系統があるのか不思議な感じがしますが、Core の方が新しいテクノロジーということです。 マニュアルにも以下のように今後は Core 系の方に力を入れると書いてあります。

In the future, Native Instruments will put less emphasis on creating new primary-level modules. Instead, we will use our new Reaktor Core technology and provide them in the form of core cells.
REAKTOR 5.5 – Core Reference – p.17

いずれのオブジェクトもリファレンスマニュアルが用意されています。 とりあえずは Core Modules だ、Primary Level Modules だ、という分類は気にせず、眺めてみて使いたくなった部品を使えば良いと思います。

Ensemble を作る上で知っておいた方が良いこと

簡単に言ってしまえば、ストラクチャービュー上でオブジェクトを配置し、入力ポートと出力ポートの間をドラッグしてワイヤーで結ぶことでシンセ/リズムマシン/エフェクター等を作ることができます。 ただ、やはり基本を知っていないとなかなか辛いものがあるので、その辺をまとめてみます。

オーディオ信号とイベント信号

オブジェクト間のワイヤー上を流れる信号にはオーディオ信号イベント信号があります。

オーディオ信号
サウンドそのもの。 サンプリングレートがクロックとなる。
イベント信号
トリガー信号や エンベロープ/LFO 等のコントロール用信号。 コントロールレートがクロックとなる。

コントロールレートはサンプリングレートに比べて低レートなので、どちらの信号でもできるようなことはイベント信号で対処した方が負荷が小さくなります。

ポートについて

オブジェクトの左側にあるのはインプット (入力) ポート、右側にあるのがアウトプット (出力) ポートとなります。

  • 単一出力ポートから複数入力ポートへの接続は OK
  • 複数出力ポートから単一入力ポートへの接続は NG

オブジェクトに「…」が表示されていれば、Ctrl (Cmd) キー押しながら接続するとポートが増えます。 これはダイナミックポートと呼ばれる機能で、特に複数の出力を受けるモジュールでは良く使われます。

ところで、各オブジェクトのポートを良く見ると色が異なるポートがありますが、これは扱える信号の違いです。

黒いポート
オーディオ信号専用のオーディオポート。
赤いポート
イベント信号専用のイベントポート。
緑 (灰緑)
オーディオ信号もイベント信号も扱えるハイブリッドポート。

ハイブリッドポートはオーディオポートと結ぶと黒くなります。 接続しているのに灰緑のままのポートはイベント信号用です。 イベント出力ポートをオーディオ入力ポートに結ぶことはできますが、逆をするには「A to E」モジュールを間に挟まなければなりません。

下の図で Peak Detector モジュールの Rel はイベントポート、In と Out はオーディオポートです。 Add (+) モジュールのポートは全てハイブリッドポートですが、Peak Detector の Out と入力ポートを結ぶと全てがオーディオ用となり黒くなります。

ポリフォニック

シンセを使ったことがある人は知っていると思いますが、複数の音を同時発音できるモードをポリフォニックモード、単音のみ発音できるモードをモノフォニックモードと言います。 ポリフォニックモードで動いているときは、ストラクチャービューの一本のワイヤー上で複数の音の信号が並列で流れているイメージです。 大抵のオブジェクトはどちらのモードでも動作可能で、コンテキストメニューやサイドペインの Property タブ Function ページで「Mono」をチェックしておくとモノフォニックモードになります。

そのオブジェクトがポリフォニックモードで動作しているかモノフォニックで動作しているかは右下のランプを見ます。

  • 黄色はポリフォニックモード
  • オレンジはモノフォニックモード
  • グレーはアクティブ化されていない、すなわちきちんと接続されていないため信号のパス上にいないオブジェクト
  • 赤い「M」の表示はミュートされたオブジェクト

ポリフォニックかモノフォニックかで接続に制限がでてきます。 モノフォニックな出力ポートをポリフォニックな入力ポートへ接続することはできますが、逆をするには「Audio Voice Combiner」モジュール (「}」表示のモジュール) を間に挟まなければなりません。 入力ポートが「×」表示になっているのはポリ→モノに接続されていることを意味しており、この状態ではポートはミュートされています。 下の図では LFO がポリフォニックモード (黄)、Add (+) モジュールがモノフォニックモード (橙) のためエラーとなっています。

また、最終的な出力ポートにはモノフォニックモードにして送らなければなりません。 同様にインストゥルメントの入出力もモノフォニックモードとなります。 大抵のシンセインストゥルメントの出力はモノフォニックモードサウンド出力×2のステレオ仕様となっています。

同時発音数とユニゾンの設定

インストゥルメントのプロパティの Function ページにある Voices の設定で何音同時発音かが決まります。 8 にセットすれば「8音ポリ」ということになります。 ちなみにパネルビューからインストゥルメントのプロパティを表示するには、インストゥルメントヘッダのインストゥルメント名をクリックするのが簡単です。

ただし、ユニゾンボイスの設定 (上画面の下の部分) で実際の同時発音数は減ってしまうかも知れません。 ユニゾンボイスは 1つのノートイベントで複数同時発音させ、厚い音を作るための設定です。 いくつ重ねるかの最低値 (Max Voices) と最大値 (Min Voices) を設定できます。 例えば、Voices = 8、Min Voices = 2 であれば実際の最大同時発音数は 4 になります。

Spread でどれだけチューニングをずらすかを指定します。 先の SoundSchool Analog の Unison Det. はこの Spread パラメータそのものです。 Min/Max Voices を 2以上に変更して、Spread を上げてみましょう。 上げ過ぎると気持ち悪くなりますが。

まとめ

とりあえず、ここまで理解すれば「Getting Started」マニュアルを読んで「?」と思うところも少なくなるのではないでしょうか? 初心者がこれだけでインストゥルメントの中身を理解するのは難しいかも知れませんが、これらの基本事項の理解なしでは先に進めないと思います。 経験者ならば、後はリファレンスマニュアルを読みつつ付属のインストゥルメントをいじっていくと何とかなる、かな?

次回ももう少し Reaktor について書きます。

シンセサイズ入門実践編: NI Reaktor の巻

この記事は Reaktor に付属する「インストゥルメント」の一つである「SoundSchool Analog」というシンセを使って音作りを学ぼうというものです。 Reaktor 上でシンセを作る方法を知りたい方は「Reaktor でマイシンセ作っちゃう?」をどうぞ。

音作りこと始め - プリセット音からの出発

前回のエントリを読んでシンセサイズの基本を押さえたら、あとは実践あるのみです。 と言ってもいきなり自由にシンセを扱えるようにはならないので、まずはプリセット音を分析することから始めましょう。 一から音色作りができる才能と時間があれば良いのですが、一般人はなかなかそうは行かないのでプリセット音色をスタートポイントにするのが吉なのです。 余分な要素を削ったプリセット音を複数重ねてまとめるだけで十分立派な音作りになります。

プリセット音を分析するには以下のようなことを試し、どの要素がそのサウンドの鍵となっているかを把握します。 そのサウンドの特徴を決めるパラメータはパッチ/プログラムごとに異なっているはずなので、多くのサウンドについてこれを行えばそれだけ様々な発見があると思います。

  • エフェクトを OFF にする。
  • 複数のオシレータで構成されているサウンドは、オシレータ (オペレータ) を一つずつミュートしてみる。
  • LFO の効果を OFF にする。
  • その他にも気になるパラメータを OFF にしてみてどのようにサウンドが変わるか観察する。

このように試して「変化が大きい」と感じたところがそのサウンドの肝なのです。 と言ってもみんな感性が違うので「ここだ!」と思うところは人それぞれかも知れませんが、それで良いのです。

Reaktor で実践だ!

今回は Reaktor 5.5 付属インストゥルメント「SoundSchool Analog」のプリセット音を眺めてみます。 SoundSchool Analog はその名の通り、アナログタイプ (減算方式) の音作り入門用にピッタリなシンセサイザーです。 同じ Native Instruments (NI) 製の Kontakt に比べたら話題にのぼることの少ない Reaktor ですが、実はとても奥深いソフトです。 Reaktor の奥深さの説明は後でするので、今の段階では Reaktor という入れ物があってその中で SoundSchool Analog というシンセを使うというイメージを持って進んでください。

起動して構成を確認しよう

今回は Reaktor をプラグインとしてではなく、スタンドアロンモードで起動して使うことにします。 Reaktor には Native Instruments の他のソフトで見られるような鍵盤 GUI は付いていません。 コンピュータキーボードで弾くこともできますが、できれば MIDI キーボードを使いましょう。 初回起動時はオーディオ/MIDI のセットアップ画面が表示されるので適切に設定します。

起動したら SoundSchool Analog のアンサンブルファイルを読み込みます。 左のブラウザ画面で「FACTORY」を選び「Ensembles」-「Classics」-「Synthesizer」と選んで下に表示されたファイル名より「SoundSchool Analog.ens」をダブルクリックしましょう。
pulse

下の様な画面が表示されますが、これが SoundSchool Analog のエディット画面です。(クリックで拡大)
Panel A

2つのオシレータ、アンプリチュード(ボリューム)用とフィルター用の 2エンベロープ、1LFO を備え、ディレイエフェクトと更には波形を確認できるオシロスコープまでついています。 簡単に言うと 2VCO/1VCF/1VCA/2EG/1LFO ということになります。

インストゥルメントヘッダーの「A」ボタンと「B」ボタンで表示パネルを切り替えることができます。 SoundSchool Analog では「B」を押すとブロックダイアグラム図が表示され、「A」ボタンを押すと元の編集画面に戻ります。
Instrument Header

「B」ボタンを押したときに表示されるブロックダイアグラム図は信号の流れの確認用で、この画面を使って特に何か編集できるわけではありません。 しかし、この画面を理解しておくことは重要です。(クリックで拡大)
Panel B

見てわかる通り、Oscillator 1/2 の出力を Mixer で混ぜて Filter で削り、Amp でボリューム調整して最後に Delay エフェクトがかかるという流れになっています。 また、Filter Envelope (「FILT-ENV -> OSC」モジュール経由) と LFO は様々な対象をモジュレーションできるようになっています。 矢印上の英字ですが、「P」はピッチ、「S」はシンメトリー (後述)、「A」はアンプリチュード (ボリューム) を表します。 LFO は Oscillator 1/2 のアンプリチュードをモジュレートすることはできませんが、その分 Amp、Filter カットオフをモジュレートすることが可能となっています。 オシレータの「A」と Amp のどちらをモジュレートしても音量を変化させることになります。 どこをモジュレートしたらどんな効果があるかは前回の記事を思い出してくださいね。

パラメータを眺めてみよう

さて、編集用パネルに戻りましょう。 前回の記事を理解していれば、半分ぐらいのパラメータについてはその役割が想像つくのではないでしょうか。 ここではわかりづらそうなパラメータのみを取り上げて説明します。 いじって効果を確認してみましょう。

Symm (シンメトリー)

Pulse (矩形波)であればパルス幅比が変化します。

Symm = 0
pulse
Symm = 0.5
pulse

Tri/Saw であれば Triangle (三角波) -> Saw (鋸波) と変化します。

Symm = 0
tri
Symm = 1
saw

Sine でも Saw と同じような変化をして Symm 値が増えると倍音が増えます。 これらの変化はオシロスコープで観察できます。

LFO にも Symm パラメータがありますが、これは LFO の波形のシンメトリーの設定ということになります。

Interval
半音単位のピッチです。
Sync
オシレータシンク (ハードシンク) 機能。
RingMod
リングモジュレータ機能。
FM
FM 合成機能。 これを上げることでオシレータ1 でオシレータ2 を周波数変調できます。 SoundSchool Analog は 2オペレータ分の FM音源として使うことができるのです。
Filter Mode
ローパスフィルター (LPF) だけでなく、バンドパスやハイパスフィルターも用意されています。 タイプの後の数字は大きい方ががっつり削られるフィルターということになります。
Detune/Unison Det.
いずれもピッチをずらすためのパラメータです。 ただし、「Unizon Det.」はユニゾンボイス (= 1つのノートイベントで鳴らすボイス数) が 2以上でないと意味ないのですが、ユニゾンボイスの設定は編集パネルからできないので、とりあえずいじらなくて良いです。 (いじってみたい人はインストゥルメントプロパティで設定します。)
K-Track
弾いた鍵盤の高さによってフィルターのカットオフ周波数を変化させるかどうかです。 0 で変化なし、1 だと鍵盤の高さに従ってカットオフ周波数が変化。

こうして見ると SoundSchool Analog はシンプルではあるものの、シンセの音作りで一般的な機能は一通り持っていることがわかります。 ここで説明しなかったパラメータに関しては製品付属マニュアル「Instrument Reference」の SoundSchool Analog のセクションを読んでみましょう。 日本語版が無いようですが、何とかなるでしょう。

音を鳴らしてみる

ではいくつかのプリセット音 (Reaktor では「スナップショット」と言います) を聴いてみましょう。 スナップショットはインストゥルメントヘッダー (あるいはメインツールバー) のドロップダウンリストから選ぶことができます。 パラメータをいじってどこがそのサウンドのキーポイントなのかも探ってみましょう。
Instrument Header

「1 – OSC Sinus」~「6 – OSC Pulswelle 2」

最初の方の「OSC」がついているスナップショットは各波形の生出力です。 スナップショット名がドイツ語なのでわかりづらいですが、例えば「1 – OSC Sinus」は鍵盤を押すと何の加工もしていないサイン波が出力されます。 Mix の Osc 1 は 0 に設定されているので、Oscillator2 のみが出力されています。 一瞬 Filter Envelope が設定されているように見えますが、Filter モジュールの Env の値が 0 なので実際は全くサウンドの変化はありません。

何はともあれ、まずはフィルターカットオフをいじってみましょう。 カットオフを変化させたときに音色の変化の大きい波形が倍音を多く含む波形ということになります。 どの波形が一番変化が大きいですか?

「32 – Basic PWM」
LFO で Oscillator 1 の Sym を モジュレートしているのですが、そうするとパルス幅の比率が変化するわけです。 単音で弾いて Scope で波形の変化を確認してみましょう (Freeze ボタンは消灯します)。 これはパルスウィズモジュレーション (PWM) という良く使われるテクニックです。
「37 – Basic Brass」
Oscillator 2 の Detune を 0 にして更に「FILTER ENV -> OSCILLATOR」の Pitch ランプを消してみましょう。 ずっと素朴な音になったと思います。 2つのオシレータのピッチが微妙にずれると厚い音になるということです。 音作りでとても重要なところです。
「39 – Basic FM」、「73 – Malletti」
FM の音作りですね。 FM パラメータを上げて Mix の Osc1 を 0 にすると Oscillator 1 は周波数変調だけのための存在 (=モジュレータ) になります。 この状態で Oscillator 1 の FM パラメータをいじるとモジュレータ出力で音がどう変化するかがよくわかります。
「40 – Basic Sync」
オシレータシンク機能を使った音です。 Oscillator 2 のピッチにエンベロープをつけていますが、Oscillator 1 の周波数にシンクされているのでピッチは変わらず音色の変化となります。 Sync をオフにするとどうなるか試してみましょう。
「41 – Basic Ringmod」
リングモジュレータ機能を使った音です。 かなり個性のある音ですが、リングモジュレータを使うとこんな音にしかならないという噂もあります。 Oscillator 1/2 共にサイン波にすると多少おとなしくなりますが、やはりリングモジュレータは飛び道具という感じでしょうか。
「54 – SawStrings」
どこかで聞いたことがある懐かしいシンセストリングス、という感じです。 ストリングス系のエンベロープはアタックを遅くしてリリースもつけるのが基本形となります。

SoundSchool Analog は構成がシンプルなので、こんな感じでいろいろいじってみることだと思います。 SoundSchool Analog のパラメータが一通りわかれば Reaktor で動く他のシンセの構造もきっと理解できるはずです。

Reaktor について

最後に Reaktor について説明します。 Reaktor を簡単に説明すると「複数のシンセサイザーやエフェクト、シーケンサー等を組み合わせてサウンドクリエイトするための環境ソフトウェア」ということになります。 Reaktor には SoundSchool Analog のようなインストゥルメントが 70種類以上パッケージされています。 インストゥルメントはシンセだけでなく、エフェクターやシーケンサーなどさまざまなタイプがあり、これを組み合わせてサウンドを生み出すことができます。

更にやろうと思えば「オシレータ」や「エンベロープ」といった単品レベル (「Module」や「Core Cell」と呼ばれます) を組み合わせて自分でインストゥルメントを作成することができます。 「タンス」と同じことがコンピュータ上で手軽にできるということです。 Native Instruments 社サイトの Reaktor ユーザライブラリには世界中のユーザが作成した何千ものインストゥルメントが公開されています。

KOMPLETE 7 も売れているようなので、既に手元に Reaktor があるけど使っていないという方もそれなりの数になるのではないでしょうか。 シンセの音作りに少しでも興味がある人はこれを機会に使い始めてみましょう。 好きなインストゥルメントを2、3見つけて使いこなすだけでも十分元が取れると思いますよ!

次回からしばらくの間、シンセの基本からは外れますが、Reaktor の使い方を解説していきたいと思います。