Cubasis Video Tutorial

Steinberg 公式の Cubasis チュートリアルビデオがアップロードされています。 例によって英語ですが、操作を見ながら聞けば何となく言っていることはわかるのではないでしょうか。

最近の YouTube は自動認識の字幕も出せますが、精度は微妙な感じです。 雰囲気を知るには良いかもw

これらを見て、「こんなこともできるんだ」と思ったのが、チャプター 3 で紹介されている MIDI via Wi-Fi (3:31~) と Audiobus (6:06~) の機能です。 共にちゃんと本体ヘルプの「Accessories」の項に書かれているのですが、関係なさそうと思いきちんと読んでいませんでした。

MIDI via Wi-Fi はパソコンの DAW (Cubase 以外でも可) に Wi-Fi 経由で MIDI 信号を送る機能です。 これは RTP MIDI に対応しているということです。 Windows ではドライバが必要ですが、Mac では OS の機能 (ネットワーク MIDI) として備わっているようです。

Audiobus はバージョン 1.1 で追加された機能です。 私は他の対応アプリを持っていないので試せませんが、ビデオを見る限りは MIDI も Audio もきちんと連携できています。 ビデオの該当部分は Audiobus 機能の紹介にもなっています。 ただ Audiobus アプリ (850円) が必要なんですね。うーむ。

まあ、どちらも私は当分使わなそうですが (爆)、面白い機能だとは思います。

ついでにもう一つ。PC のブラウザから MediaBay のファイルに直接アクセスできる Wi-Fi Server 機能は便利です。 一括削除が簡単にできるし、ブラウザのダウンロード操作で PC にファイル保存できます。 Setup 画面で「WiFi Server」を ON にして表示された URL にアクセスするだけです。

というわけで、チュートリアルビデオを紹介しましたが、全部で 30分程度なので購入済みの人も購入検討中の人も見てみると良いと思います。

Cubasis の使い方

Cubasis の使い方についてひっかかりそうなところをまとめておきます。 ヘルプ等を見るとちゃんと書いてあるのですが、英語だと書いてあっても見えない人もいるようなので、まあ覚書として書いておきましょう。 そんなに難しいこと書いてあるわけじゃないので、英語だからとあきらめずに読んでみましょうね。

最初の一歩

最初は Media ボタンを押してメディアベイを表示し、Project タブを表示させテンプレートなりプロジェクトなりをダブルタップするところから始めます。 他のアプリに比べて Cubasis の操作はダブルタップで行うことが多いように感じました。 T アイコンが付いているのがテンプレートですが、最初は「Luchy Seven [Demo]」をダブルタップして、デモプロジェクトを生成することから始めるのが良いでしょう。 Cubase 同様メディアベイはループ選択等にも使います。

最初に戸惑うのは Save ボタンがないことでしょうか。 Cubasis ではプロジェクトは自動保存されるのみで、マニュアル保存はできないのです。 どんどん上書きされるので、必要であればスナップショットを取得しなければなりません。 スナップショットボタンはメディアベイの左下にあります。

ツールの使い方

Cubase 同様イベント編集はツールボタンを使います。 マウスとタッチパネルではやり方が変わるので最初は戸惑うかも知れません。

Select
複数イベントを選択するには Select ボタンをタップしてアクティブにしてからスライドして選択します。
Split
このボタンを押すと Playhead (プロジェクトカーソル) の位置で選択イベントを分割します。
Glue
複数イベントを選択してからこのボタンをタップしてくっつけます。

まあ、後はわかるでしょう。

PC との連携

Cubasis プロジェクトを Cubasis Importer を使って Cubase 6.5/7 に読み込む手順を書いておきます。 インストゥルメントやエフェクト (センドエフェクトを除く) の設定も Cubase に持ってくることができます。 事前に Cubasis Importer をインストールしておきましょう。 Windows で試していますが、Mac も恐らく一緒でしょう。 iTunes は最新の 11.0.2 です。

  1. Cubasis 側で Media – Project から Share ボタンを押し、Zip を選択します。
  2. iPad を接続し、PC 側で iTunes を起動します。Wi-Fi 接続だと時間がかかるのでケーブルでの接続をお勧めします。
  3. iPad ボタン (下図) を選択し、「App」タブを表示します。

    iTunes iPad button

  4. 「ファイル共有」で Cubasis を選び「Shared Projects」フォルダを選んで「保存先…」で PC の出力先フォルダを選択します。
  5. 4. で出力された Zip ファイルを展開します。
  6. Cubase を起動し、「ファイル」-「読み込み」-「Cubasis Project」と選択し、5. で展開したプロジェクトファイルを選びます。 4. の操作で次回も同じ保存先フォルダを使うならば、ワーキングフォルダはこのフォルダの下につくってはなりません。 でないと、次回転送時にごっそり消されちゃいます。
  7. プロジェクトが読み込まれ、各種エフェクターや HALion Sonic SE のスクリーンが表示されます。必要に応じて Cubase プロジェクトを保存しておきます。

なお、iTunes のファイル共有で逆に PC 内の MIDI ファイルやオーディオファイルを Cubasis へ送って使うこともできます。

もろもろ

カーソルや左右ロケーター、プロジェクトウィンドウズームは、スライド、ピンチアウトなど想像通りの操作ですね。

e ボタンはいろいろなところで編集ボタンとして機能します。 メディアベイのプロジェクト一覧表示ではプロジェクト名編集ですし、Key 表示ではそのキーやパッドにアサインされたコードやドラム音色の変更になります。 エフェクトならばパラメータ編集ですね。 エフェクトの編集画面の Preview を押すと MIDI トラックであれば音を鳴らして確認することができます。

まあ、このあたりはいろいろいじってみればドキュメントみるまでもないかも知れませんが。

追記) 公式チュートリアルビデオがアップロードされています。

Cubasis とは懐かしい名前で出てきたなあ

今回は Steinberg から先日リリースされた iOS 用 DAW ソフトウェア、Cubasis のファーストインプレッションです。

昔、あるところに…

Cubasis というのは実は私にとってとても懐かしい名前なのです。 その昔 AT 互換機 (DOS/V マシン!) が日本に広がり始めた頃だったと思います。 PC-9801 シリーズ用 Sound Blaster を購入した時にオマケでついていたのが Steinberg の Cubasis というソフトウェアでした。 当時は VST 登場前で MIDI のみ扱えるシーケンサーソフトウェアでした。 これをアップグレードして購入した Cubase Score 1.x (SX じゃないですよ) が私と Cubase との最初の出会いでした。

ちゃんと活用できているかは疑わしいのですが、Cubase との付き合いだけは長いのです。 そんなわけで Cubasis の名前が復活したとあっては見過ごすわけには行きません。 というか「やっぱり Cubase にデータを持って行けないとなあ」と思い、GarageBand for iOS の使用頻度が息子に負けていた私にとってこれは待望のソフトウェアです。

機能など

トラックの種類は MIDI と Audio の 2種類のみととてもシンプルです。 GarageBand のようなコードを選べば勝手にアルペジオを弾いてくれる「スマートなんちゃら」みたいな機能はありませんし、Cubase 7 のコードトラックのようなものもありません。

エフェクトについてはインサートもセンドもマスター用も使えるのは一箇所につき 3種類までです (ずっと下にあるルーティング図を参照)。 使えるのは Reverb/Delay/Chorus/Phaser/Flanger/Filter/Limiter/Compressor/Amp Sim/Overdrive/EQ と一通りは揃っています。 各エフェクターのパラメーターもシンプルですが、レコーダーとして使ってラフにミックスダウンするような使い方であれば特に問題となることはないでしょう。

レイテンシーも問題なく、返しをヘッドホンでモニターしながらのボーカル録りも違和感ありませんでした。 (インターフェイスは iXZ です。この辺詳しくないですが、インサートエフェクトがかかるのでダイレクトモニターということはないと思います。)

MIDI トラックで使用できるインストゥルメントは 70種超。 GM 音源より種類が少ないですが、キワモノを除いてベーシックなものを揃えたという感じなので、たぶん足りるでしょう。 パラメーターとしてはアタックとリリースしかいじれず、やるのであればあとはエフェクトで音色を作ることになります。 まあ、本格的に音色作りするためのものではないということですね。 外部キーボードで弾いてもけっして楽しい音ではないですし、あくまで演奏データ作成時のモニター用という感じです。 特にピアノ系は弾きやすいところまでリリースパラメータを調整した方が良いでしょう。

結局、録音、パートトラック素材作成からラフミックスまでが Cubasis の守備範囲でそれ以上のサウンドづくりは Cubase にインポートしてからということでしょうね。 Cubasis Importer を使えば、インストゥルメントやエフェクトの設定 (ただし、センドエフェクトはダメっぽい) も含めて Cubase に読み込むことができます。

逆に MIDI ファイルやオーディオファイルを PC から持ってきて使うこともできます。 MIDI トラック用のエディターはキーエディター (ピアノロール画面) しかないので、ドラムトラックはループ素材を iPad に放り込んでそれをつなげてざっとつくるというような使い方が良いかも知れません。

誰に向いている?

やはり、Cubasis の特徴は良くも悪くもシンプルということでしょう。 これについて、私はとても好意的に捉えています。 多機能な Cubase だと圧倒されてしまう人でも、この内容であれば全ての機能を把握するのは難しくないはずです。

これだけ Cubase 関連の記事を書いておいて言うのも何ですが、私はコンピューターに向かって音楽を作るのが苦手な人間です。 それよりも演奏の練習の方が好きだったりするし、記事を書くのも自分が操作を忘れないために書いていたりします。 でも、iPad + Cubasis ならば、楽器に向かって傍らに iPad を置けばすみます。 シーケンサー専用機で育った私としては懐かしい感覚です。 音楽をやるときはこういったことが結構重要だったりするのではないでしょうか。

ですので、同じようなプレーヤー系統の人には自信を持ってお勧めできます。 逆にエフェクト等の機能はあくまでもラフミックス用という感じなので、ミックス系の人にとっては微妙な気がします。 コンポーザー系ならば GarageBand とどちらが好みか、Cubase との連携が必要かで判断という感じでしょうか。(勝手に系統をつくってますがw)

他にピッタリハマるのは DAW 初心者です。 ミキシング機能という点では GarageBand は信号フロー図が必要となるような代物ではありませんが、Cubasis ではちゃんとヘルプにフロー図 (下図) が出てきます。 エフェクトも一通り揃ってますし、初心者にとって取り組みやすい数に収まっているとも思います。 基本は抑えられているので、将来パソコンを中心とした DAW 環境にステップアップしたときもまごつくことはないでしょう。 「パソコンで環境を作るとお金かかるし」という人には、まず iPad + Cubasis + 周辺機器で始めてみることをお勧めします。

effect-routing
(Cubasis のヘルプより)

価格面の話をすると、今のモバイルアプリの状況では 4,300円という価格が高く見えるかも知れません。 しかし、iPad + 4,300円 (と必要な周辺機器) で音楽制作を始めることができると考えれば納得できる範囲ではないでしょうか。 GarageBand の値付けはマーケットインフラや端末を Apple が握っているから実現できる価格であり、それと比べてしまうのは酷です。

要望など

要望もあります。 まず、この内容であればエフェクトに Tuner を付けて欲しいです。

それと、オーディオワープ (オーディオイベント伸縮機能) も欲しい。 確かに昔の感覚だとオーディオの長さが変わる方がおかしいというのもありますが、今となっては GarageBand ですらやっていることなので、ここは頑張って欲しい。 オーディオループを組み合わせて使う人も多いでしょうから。

とは言っても、私はかなり Cubasis を気に入っています。 なるべく iPad を持ち歩くようにしてみようかなと思うわけですが、そうすると iPad mini も欲しくなってしまったり…。 小さいと操作し辛いよと暗示をかけて物欲を抑えていますが、Retina 版がでたらどうなるんだろう。

iOS版 GarageBand と組み合わせる周辺機器

前回は GarageBand を初心者&作曲用途にお勧めする記事を書いたのですが、続編として目的別に周辺機器は何を買えばよいかまとめてみました。 私は iPad 2 を使用していますが、Camera Connection Kit 以外は iPhone でも使用できます。

エレキギター演奏や歌を録音したい

エレキギターの演奏や外部マイクで歌等を録音をするにはエレキギター/マイク用インターフェイスが必要ですが、これには2つのタイプがあります。

1. ヘッドホンジャックに接続するもの

iPad/iPhone のヘッドホンジャックは出力と入力の両方に使うことができる構造になっています。 1つめはここに接続してオーディオ入力に用いるタイプです。 比較的安価なので手軽に購入することができますが、クロストーク (ギター/マイクの音に再生音も混じってしまう) が発生することもあったりで音質的には 2. のタイプよりも劣ります。

このタイプには iRigiXZAmpKit LiNK 等があります。

2. Dockコネクタに接続するもの

2つめのタイプは、自身が A/D コンバータを持ち Dock コネクタに接続するタイプのものです。 こちらの方が音質は良いのですが構造上高価になってしまいます。 また、バッテリー駆動とならざるを得ず、バッテリーの残量を気にする必要があります。 アプリとの相性もあるようです。

このタイプには Mobile InApogee JAM 等があります。

で、私は何を使っているかと言うと iXZ を購入しました。 所詮、整備済製品の iPad 2 で使うのだからと割り切り、音質よりも価格を取りました。 また、ギターピックアップとマイクでは出力インピーダンスが異なるので、マイク使用を考えているならば製品がマイク対応を明確にうたっている方が安心なのですが、この点 iXZ は問題なしです。 iXZ をマイクに接続する場合、XLR 端子を使用することになりますが、既にケーブルを持っていたので躊躇することはありませんでした。

実際のところ、iXZ を使ってみるとクロストークは気にならず、十分な音質です。 最初は iXZ のプラグがきちんとヘッドホンジャックの奥まで挿し込まれておらず、内蔵マイクの音も拾ってしまう状態で「アレ?」と思ったのですが、きちんと挿せば内蔵マイクは無効化され、パッシブタイプのピックアップでも十分な音量となります。 きちんと挿入されれば入力設定画面で「入力レベル」スライダーが表示されるようになりますので、それとわかります。 (使用バージョンは GarageBand for iOS 1.2)
Input

Web 検索を実行すると 1. タイプのインターフェイスの音質への不満が多く見つかりますが、きちんとプラグを挿していないからではないかと思えてしまうぐらいの音質です。 それと、着信などで録音が中断されるのが困るというコメントもどこかで見かけましたが、録音時は機内モードを ON にすればいいわけで…。

物理的な鍵盤 (MIDI キーボード) を弾きたい

続いて鍵盤系の話に行きましょう。 GarageBand では Keyboard の他にも Drums/Smart Bass/Smart Guitar/Smart Strings と一通りの音色を外部鍵盤で鳴らすことができます。

まず、iPad とミニ鍵盤を組み合わせるのであれば Camera Connection Kit + Keystation Mini 32 をお勧めします。 Keystation Mini 32 とよく比較される KORG microKEY は iPad で使おうとすると電源供給可能な USB ハブと組み合わせなければならない (新製品の 25鍵モデルを除く) ので、手軽に接続して使うというわけにいきません。

既にシンセ等を持っている場合は ヤマハ i-MX1 を使いましょう。 シンセの MIDI 端子に iPad/iPhone を接続して使うことができます (Camera Connection Kit 不要)。

ヘッドフォンも重要

それと初心者の場合はヘッドフォンも新しく用意する場合が多いと思います。 とりあえず買うのであれば 5千円ぐらいまでのカナルタイプ (例えば MDR-EX300SL ) が手ごろですが、きちんとしたモニター用ヘッドホンを 1つ持っていても損はないと思います。 オーディオインターフェイスよりもこちらの方が重要です。

自分は何を使っているかというと iXZ、i-MX1、Keystation Mini 32 が手元にある状況です。 鍵盤物はこのところ PC + Keystation Mini 32 という組み合わせを使うことが多かったのですが、今後は iPad + シンセという大きい鍵盤で弾くスタイルもありなのかなと思っています。 気軽に使えるのが iPad の良さだと思うので周辺機器が重くならないようにしたいものです。

GarageBand on iPad がすごい!

いや本当に 450円のアプリケーションとは思えないです。 DAW を始めてみたいという初心者にお勧めできるし、作曲用ツールとしても良いと思います。

もちろんいつも使っている Cubase と比べてしまうと出来ないことは多い (というか比較してはいけない) のですが、その分シンプルで気楽に使えます。 この 3月のアップデート (iOS用 バージョン 1.2) でピアノロール画面での編集やバウンス録音もできるようになっています。
GarageBand

以下、自分が使ってみて気になった点です。

  • クオンタイズは録音時に指定。後からかけることはできない。
  • Apple Loops の種類は豊富で、テンポの変化に対応しグローバルなキー設定でトランスポーズされるけど、小節ごとにキーを変えることはできない。
  • MIDI ファイルでエクスポートすることができない。
  • ベースアンプシミュレーターがない。

コンピュータ用 DAW ソフトとの連携という点では、iTunes ライブラリに GarageBand 形式として書き出せば Mac の GarageBand や Logic でデータを開くことができます。 他の DAW ソフトで使うにはオーディオファイルとして書き出したものを読み込むしかないです。

これらの制限があっても作曲用として使うには十分ではないでしょうか。 私の場合、どうしても通常の DAW ソフト (Cubase) だと気軽に起動して使う、という感じにはなりません。 iPad Camera Connection Kit を購入して Keystation Mini 32 (私も使ってます) 等のミニ鍵盤やオーディオインターフェイスを使ったり、iRig 等でギターを録音するような使い方もできますが、コンピュータの前に座るよりもずっと気楽に作業に向かえるように思えます。 気軽に演奏を録音して曲にするという使い方には PC より向いているように思えるのです。

また、初心者用としてもお勧めできます。 最初からフルスペックの DAW 環境を揃えるにはお金もかかり勇気が必要ですが、iPad + GarageBand であればちょっと試してみたいという人にピッタリです。 それで本格的にやってみたくなったら、そこからお金をかけて環境を作って行けばよいと思います。 順当に行くと Logic 使いになるのでしょう。

他にはドローバーつきのオルガン (レズリースピーカーが回ってます!) とかギターアンプシミュレーターとかも楽しいので、iPad 使いで音楽制作関係のソフトを探しているということならば、まず入れてみる価値のあるソフトだと思います。 こういうのが 450円で売っているんだからスマホ向け開発は儲からないんだろうなあ…。

録音に用いる小物についてはこちらの記事にまとめました。