サウンド&レコーディング・マガジンの 2010年12月号に「初めての『ミックス・ダウン』集中講座」という特集があります。 この号にはミックス用の素材がついてきて、DAW 環境が手元にあれば自分でミックス・ダウンしてトラックを完成させることができます。 誌面では Pro Tools を用いて説明されていますが、Cubase 5 でももちろんミックス・ダウンは同様にできます。 このブログエントリは初心者がサンレコ記事を見ながら Cubase 5 でミックス・ダウンをする時に知っておきたいことのメモ書きです。 ミックス・ダウンの基本はサンレコ記事内で紹介されているので、それを読みながら Cubase を使って自分で手を動かすためのメモです。
Cubase 5.5 を前提としていますが、Studio や Essential でも操作は同じ (でたまに使えない機能があるの) だと思います。 最新版の Cubase 6 では全く同じ操作が可能です。 用いている用語は Cubase の日本語版マニュアルに合わせているので、必要に応じてマニュアルを検索・参照してみてください。 見出し中括弧書きのページ番号はサンレコ誌のものです。
最初に
まずはオーディオインターフェイスの設定をきちんとしておきましょう。 実はここが初心者にとっての最初の難関だったりするのですが、ケースバイケースなのであまり書けることはありません。 とりあえず2つだけ。
- インターフェイス付属の ASIO 対応ドライバが選択されているか確認しましょう。
- ミックス用途ではリアルタイム性はあまり重要でないと思うので、バッファを多めにとってノイズ発生を避けましょう。
プロジェクトの下準備 (p.76)
Cubase での操作は以下の通りです。
- 「新規プロジェクト」で「その他」-「Empty」を選択します。
- ファイルは現在のプロジェクカーソルの位置 (現在位置=縦棒の位置) に読み込まれるので、これが「1.1.1.0」の位置になっているのを確認しましょう。
-
「ファイル」-「読み込み」-「オーディオファイル」でサンレコ付属の DVD から素材ファイルを読み込みます。
複数ファイルを選択して読み込むことができるので一気に全部読んでしまいましょう。
また、このとき「作業ディレクトリにファイルをコピー」をチェックしておきます。これにより DVD からローカルディスクに素材がコピーされます。
-
「別々のトラックに挿入」するようにしましょう。
下図の表示には「異なるトラック」を選択します。
読み込んだ後はドラッグアンドドロップでトラックの位置を変えることができます。
曲として用いる区間をマーク
素材には最初と最後に余分な間が入っているので、マーカートラックを使って曲として用いる区間をマークしておくと便利です。
左/右ロケーターを曲の最初と最後に配置して「サイクルマーカーの追加」ボタンを押します (図中赤丸)。
例えばミックスのファイル書き出し時には、このマーカーをダブルクリックすると左/右ロケーターが曲の最初と最後に移動するので簡単に準備ができます。 マーカーは使いこなすと便利な機能だと思います。 ちなみにマーカートラックがなくてもマーカーを使用することはできますが、一度作ったマーカーを削除することができなかったりします (Cubase5.5 の場合)。
時間ベースでの編集
素材を読み込んだ後シーケンスを追加する場合等は小節位置を合わせておかないと作業がしにくくなりますが、今回はただのミックスなのでテンポやビートは気にせず時間ベースで考えて作業しましょう。 以下の設定は必須ではないですが、細かい作業に踏み込む可能性があるならばやっておいた方が良いでしょう。
- 読み込んだ各トラックをリニアタイムベースにします (次項図中赤丸)。
-
ルーラーの表示を「秒」表示にします (図中赤丸)。
- スナップはオフにした方が作業しやすいでしょう。
音量の確認 (p.77)
誌面で紹介されているベースの音量の設定については Cubase でも全く同様にメーターを確認することができます。
出力バスレベルである下図の丸印部分を -10dB に設定することになるのですが、この部分をクリックするとメーターをリセットすることができます。
(追記:
本誌を読むとわかるのですが、「VU メーターでベースが -6dB」=「DAW のピークメーターで -10dB」となるそうです。
タモリ倶楽部を見た人は VUメーターとピークメーターの違いに気をつけましょう。
もちろんこれが絶対の値というわけではないです。)
Send の扱い
FX チャンネルトラックを追加すると「チャンネル設定ウィンドウ」の Send からルーティングできるようになります。 FX チャンネルトラックもオーディオトラックと同様に「チャンネル設定ウィンドウ」を表示して設定できるので、複数のエフェクトを組み合わせたり更にどこかに Send したりということが可能です。
チャンネル設定ウィンドウ
EQ やエフェクト (Insert、Send) の設定は「ミキサー」画面か「チャンネル設定ウィンドウ」で実施することになりますが、初心者のうちは「チャンネル設定ウィンドウ」を用いるのが良いと思います。
まずはこの画面に慣れることです。
特に EQ は初心者にはいろいろ難しいと思いますが、図の矢印&赤丸部分をクリックすることでプリセットを呼び出すことができるので、まずは大量のファクトリープリセットの中からそれっぽい名前のものを選ぶことから始めてみましょう。
なおインサートエフェクトの 7番目、8番目はポストフェーダーになっています。 ドラッグしてエフェクトの位置を変えることができるので、エフェクトの順序やプリ/ポストフェーダーでの違い等を手軽に試すことができます。
エフェクト
エフェクトパラメータについてはきりが無いのでここでは少しだけ。
まず Compressor について一言。
「GR」=ゲイン・リダクションのメーターがかかり具合 (減衰量) を表しているのでこれを見ながら値を決めましょう (下図赤丸)。
また、各エフェクトには EQ 同様多くのプリセットが用意されているのでこれを活用しましょう。
オートメーション (p.82、p.86)
Cubase でもボリュームをはじめとする各種パラメータのオートメーションが可能です。 以下ボリューム操作のためのオートメーション設定例です。
-
下図のように操作対象トラック上で右クリック後「オートメーションを表示」を選んでオートメーショントラックを表示します。
-
鉛筆ツール (右クリックで表示・選択) でオートメーショントラックのデータを書き込みます。
余分に書いてしまったら、矢印ツールで選択後 Delete キーで削除すれば良いです。
ドラッグして位置を直すこともできます。
操作の仕方は「オペレーションマニュアル」の「オートメーション」の章に詳しく書かれています。
図中の「ボリューム」と表示されている部分をクリックするとその他のパラメータを選択することもできます。 センド量やパンの他、インサートエフェクトの各種パラメータもいじることができます。
ちなみにオートメーションをリアルタイム操作で記録するには、「W」ボタンを点灯させてトラックを再生しながらVSTi 画面や MIDI コントローラを操作します。録音時だけでなく再生時も記録することができます。 なお、「R」を消灯するとオートメーションの再生がされなくなってしまうので注意しましょう。
グループトラック
例えば複数のボーカルパートに同じ設定のエフェクトをかけたいとき、それぞれのチャンネルを設定するよりもグループチャンネルトラックを作成してまとめて扱った方が簡単です。
グループチャンネルトラックを作成すると下図のようにチャンネルの出力先としてそのグループチャンネルが表示されるようになります。
それぞれのボーカルパートで音量とパン等個別の設定を行い、共通のエフェクトはグループチャンネルの方でかける、というような使い方ができます。
なお、複数のフェーダーを1つの操作で動かすだけならば、グループトラックを使わなくても「チャンネルをリンク」することで対応できます。 複数のチャンネルを選んでコンテキスト (右クリック) メニューから「チャンネルのリンク」を選ぶだけです。 詳しくはオペレーションマニュアルの「チャンネルをリンクする」の項を参照ください。
マスタリング用エフェクト (p.87)
ミキサー画面から出力用のバス (通常は「Stereo Out」) の「チャンネル設定ウインドウ」を表示し、インサートエフェクトを設定します。 「新規プロジェクト」で「マスタリング」-「Stereo Mastering」を選んで作成されたプロジェクトは、 StereoEnhancer と VSTDynamics の2つがこの形でセットアップされます。
ミックスダウンの実行
「ファイル」-「書き出し」-「ミックスダウン」で行います。
以下の画面が表示されますが、詳細はマニュアル参照ということで。
書き出し前に左/右ロケーターの位置を書き出し区間の最初と最後に設定するのを忘れずに!
オートメーションを使っている場合は「実時間で書き出す」ようにした方が良いようです。 使用 VSTi によるかも知れませんが、実時間で行わないとトラック再生時とミックス時で出力結果が変わることがありました。
最後に
誌面連動のミックスダウン・コンテストが 12/31 締め切りで実施中です。 今からでも間に合うので Cubase をお持ちの方は是非サンレコ誌を買って手を動かしてみてください。
2011.5.21 追記
若干追記しました。
最新バージョンは Cubase 6 となりましたが、こちらでも同じように操作できます。