Cubase 5 で「レイヤー」
私自身は Cubase 5 付属の VST インストゥルメント (VSTi) の出来に結構感動しているのですが (VST 5 の USM なんてひどかったもんね!)、世の中には付属 VSTi の音では満足できない人が相当数いるようです。 恐らくそのような感想を持つ人の大多数はプリセットから音色を選ぶだけになっているのではないかと推測するのですが、実は難しい音色エディットをしなくても、音を重ねてちょっと工夫するだけでプリセット音とは一味違うサウンドをつくることが可能だったりします。
というわけで、ここでは一つのトラック内で複数の VSTi を重ねて鳴らす方法を説明します。 シンセ関連用語で「レイヤー」というやつです。 お金の力に任せてサードパーティ製 VSTi をガンガン買い揃えるのも素敵ですが、お金がなくてもセンスと工夫で何とかしてみましょう、というのが今回のテーマです。
実際の操作
ここでは Cubase 5 の標準プラグインを用いて Mystic + HALionOne × 2 を重ねる例で説明します。
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「VST インストゥルメント」ウィンドウを表示し、必要なインストゥルメントを選択します。
Mystic については「プラグイン "Mystic" を割り当てた MIDI トラックを作成しますか?」に「作成」と答えて MIDI トラックを合わせて 作ります。
HALionOne については、新たな MIDI トラックは不要なので「キャンセル」を選んでおきます。
- ここまででプロジェクトウィンドウ上には VST インストゥルメントチャンネルが3つ、MIDI トラックが1つできているはずです。 それぞれの VSTi で好きな音色を選んでおきます。
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(表示されていない場合は) MIDI トラックのインスペクターに「MIDI センド」を表示します。
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MIDI トラックの「MIDI センド」で、2つの HALionOne に接続するよう設定します。
Mystic については MIDI トラックの出力先として割り当てられているはずなので、「MIDI センド」で設定する必要はありません。
- この状態で MIDI トラックを選択し、MIDI 信号を送れば3つの VSTi の音が重なって鳴るはずです。
ここまでできれば、後は音色間のレベルやパンを調整したり、好きなエフェクトをかけたりしてサウンドを整えていきます。
(2012年12月追記: この他にトラック間で共有コピーする方法もあります。Shift 押しながらコピーするやつです。サポートブログで紹介されていました。)
音作りのヒント
音作りのヒントをいくつかざっくばらんに書きます。
- 定番は減衰系 (ディケイ系) と持続系 (サスティン系) の組み合わせなので、初めての人はまずそこから始めると良いと思います。
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音色によってはオクターブ上げ (下げ) てから重ねたい時があると思います。
そんな時は「MIDI センド」の設定で、「MIDI Modifiers」をかませて「移調」の値を調整します。
- 「MIDI Modifiers」の「範囲」「ノートフィルター」をうまく使えば、レイヤーだけでなく「スプリット」も可能です。
- 特にリバーブ系のエフェクトについては VSTi そのもののエフェクトはオフにして最後にまとめてかける方が音がなじむでしょうし、パフォーマンス的にも良いと思います。 これをするにはグループチャンネルトラックを作成し、各 VST インストゥルメントチャネルの出力先をこのグループチャネルトラックにした上で、グループチャネルトラックにリバーブをかけます。 グループチャネルトラックにまとめておけばボリュームコントロール等何かと便利だと思います。
- 2つの減衰系の音を混ぜずに重ねたいときはパンを調整して片方にショートディレイをかけると良いかも知れません。
- お気づきの通り、VSTi を重ねればその分 CPU パワーをを消費します。 Cubase には CPU 消費を抑えるために「インストゥルメントフリーズ」という自動オーディオファイル変換機能がありますが、「MIDI センド」先として設定している VSTi の再生をフリーズさせる方法は無いようです。 パフォーマンス的にどうしようもなくなってきたら手動で「オーディオミックスダウンの書き出し」をするしかなさそうです。
- 最後にもう一つ、同じ音色でも単体で聞いたときとオケの中に入ったときでは印象が変わることが多いということを付け加えておきます。 Cubase を使う人は音色でなく曲をつくる人だと思うので、リッチな音よりも曲の中で役割をしっかり果たす音を狙う方をお勧めしておきます。