Groove Agent ONE を使ってパラアウト

MIDI トラック vs. インストゥルメントトラック

もともと MIDI シーケンサーとして Cubase を使い始めた私にとっては、最新版の Cubase 5 上で MIDI トラックを使うことは特別なことでないのですが、インストゥルメントトラックが存在する今となっては MIDI トラックよりもインストゥルメントトラックの方が広く使われているようです。 確かに VST インストゥルメントの設定と MIDI データを一箇所にまとめる方が管理はしやすいでしょう。

ただ、MIDI トラック (+インストゥルメントチャネル) でないと出来ないこともあります。 一番ありがちなのはリズム音源をパラアウト (マルチアウト) で鳴らしたいときです。 レコーディング時にはせめてスネア、バスドラ、その他 (ステレオミックス) 程度には出力を分けて音作りをしたくなりますよね? でも、ステレオ出力のみという制限があるインストゥルメントトラックではこれはできないのです。 こんな時は MIDI トラック+インストゥルメントチャネルを用います。

Groove Agent ONE を使ってパラアウト

では実際に Cubase 5 付属の VST インストゥルメントである Groove Agent ONE でスネア、バスドラ、その他を分けて出力するためのセットアップ方法を説明します。 Groove Agent ONE をインストゥルメントチャネルで用いると最大16個のステレオ出力を用いることができます。 以下の操作を行うと Groove Agent ONE (ステレオ×3出力) がアサインされた新しい MIDI トラックができます。

  • 「デバイス」-「VST インストゥルメント」を選択し、VST インストゥルメントウィンドウを表示します。 「no instrument」と表示されている部分をクリックし、「Groove Agent ONE」を選択します。
  • (デフォルトの環境設定のままであれば)「プラグイン "Groove Agent ONE" をアサインした MIDI トラックを作成しますか?」と聞かれるので「作成」を選択します。これで出力先が Groove Agent ONE に設定されたMIDI トラックが作成されます。
  • もう一度 VST インストゥルメントウィンドウを表示し、一番右のボタン (図中赤丸) をクリック、「GA One 2」、「GA One 3」にもチェックを入れます。
    これで計3つのステレオ出力が有効になりました。
  • Groove Agent ONE のプリセットの設定では全てのサンプルの Output は「ST1」になっていますが、スネアの Output を「ST2」に、バスドラの Output を「ST3」に設定します。これらは Groove Agent ONE のパネルで設定します。
  • ミキサーをみると GAOne 1~3 のチャンネルストリップが表示されているはずです。これでパラアウトの設定ができました。

ドラムマップの設定はインストゥルメントトラックの場合と同様にできます。 スネアやバスドラをそれぞれステレオで出すのはもったいないような気がしてしまいますが、そういうものだということで。

もしスネア、バスドラ等手持ちのサウンドファイルがあれば、MediaBay より Groove Agent ONE へドラッグ&ドロップすることで簡単にパッドに音色を割り当てることができます。 私はお気に入りのスネアのサウンドファイルを使ってゲートリバーブ (リバーブ+ゲートのシリアル接続) をかけたりしてます。 以前は LoopAZoid を使って同様のことをしていましたが、今は完全に Groove Agent ONE に置き換わりました。

Groove Agent ONE でマイドラムキットをつくろうとしている方はこちらの記事 (「Groove Agent ONE でマイキットをつくろう」) もどうぞ。

Cubase で生録演奏に同期するテンポトラックを作成する方法

オリジナル曲をバンドでやっていると既に録音されている演奏に追加パートを重ねてアレンジの試行錯誤をすることがあります。 例えば、ギター引き語りのデモ演奏にリズムパートを加えたり、スタジオ練習の録音に追加フレーズを足したり、というようなことです。

このようなときは Cubase を使って追加パートの様々なテイクを試すのですが、録音された演奏と小節のタイミングを合わせておかないといろいろと不便です。 このような場合に私は MIDI キーボードでテンポをタップしてテンポデータを作成しています。 VST5 ではヒットポイントという機能を使ってこれを行っていたのですが、コマンド体系の異なる Cubase 5 でも「タップテンポ情報とマージ」機能を使ってほぼ同じようなことが出来ました。 今回はこの方法を簡単にまとめます。

(追記:タップテンポ機能は Cubase 6 でも使用できます。また、Cubase 6 からの新機能のテンポ検出機能についてはこちらの記事をご覧ください。)

  1. まずは新規プロジェクトに素材となる音源をオーディオトラックとして読み込みます。「ファイル」-「読み込み」-「オーディオファイル」を実行します。
  2. 読み込んだパートの頭の余分なところをリサイズして削ってから、最初の拍が 1小節目の 1拍に来るようにパートを移動します。 (リサイズの操作は「入門マニュアル」の「チュートリアル2」参照) この段階ではテンポは合っていないので、スナップオフでリサイズしてから、スナップオンにして 1拍目を合わせます。
  3. MIDI トラックを作成し、リニアタイムベースに指定します。

    また、「プリカウント/クリック」を有効にした方が良いでしょう。
  4. 録音を開始し、音源のプレイバックに合わせて MIDI キーボード等をタップします。 タップの単位はテンポデータを作成するときに指定できるので、曲のテンポを考慮の上、やりやすい単位でタップすれば良いです。 アップテンポな曲ならば小節単位で十分だと思います。
  5. 多少のミスならば修正して使ってしまうのが時間の節約になると思います。 録音したタップ情報 (MIDI ノート) の一部を修正したい時は、インプレイスエディターを使ってオーディオトラックの波形を見ながら MIDI ノートの追加・削除等を行うのが良いでしょう。
  6. 後は MIDI トラックを選んで「MIDI」-「機能」-「タップテンポ情報とマージ」を実行するだけです。

MIDI 機器を持っている人にとっては、まず今回の方法でテンポデータを作成してしまい、必要に応じて「タイムワープツール」を使って微調整というのがお手軽なのではないかと思います。