Cubase 7 を始めよう

今回の Cubase のバージョンアップではミキシングコンソール画面がガラリとかわり Cubase 5 → 6 のときよりもインパクトの大きいバージョンアップになっているように感じます。 今回は Cubase 7 を始めるための情報を集めてみました。

インストール

私は Windows 64ビット版 6.5 → 7 のアップグレードでしたが、1点途中で躓いた以外は順調に終わりました。 ちなみにインストールは「このコンピューターのほかのユーザーでも使用する (すべてのユーザー)」を選んだ以外デフォルト設定でのインストールです。 躓いた 1点とは Halion Sonic SE へのディスク入れ替え操作です。 以下のような画面が表示されるのですが、入れ替えても先に進みません。

cubase7 install

実はこの画面、下の方に「OK」、「キャンセル」ボタンが隠れているようです。 かすかにボタン上部が 2つ見えてますよね? なので左側ボタンのわずかに見えている上部を押すか、ヤマハの説明するようにタブ+ Enter で操作すれば先に進めます。

ところで、2ちゃん経由で知ったのですが、HALion Sonic SE (と Groove Agent ONE も?) のプリセットがロードできず eLicenser のアップデートをすると解消されるケースがあるようです。 リンク先に書いてある解消方法は、「eLicenser Control Center のアンインストール+最新版インストール」とそれでもダメだった場合の「手動 DLL 削除+最新版インストール」です。 (追記: 公式情報出ました)

それと Cubase は昔から複数のメジャーバージョンを並存させることができます。 Cubase 7 をインストールしても Cubase 6 (6.5) は削除されません。

どこから始める?

今回、インストール時に結構な大きさのファイルをダウンロードするようになりましたが、チュートリアルやデモプロジェクトもオンラインでの提供に変わっています。 チュートリアルについては現時点で日本語字幕ありのものは見当たりませんが、英語は慣れなので気にせず聞いてみましょう。多少細かい内容が聞き取れなくても画面の動きと合わせれば何ができるかはわかると思います。 (追記: 2013.5 現在では日本語字幕を表示することが可能になっています。YouTube の字幕メニューで日本語を選びましょう)

マニュアルも現時点で日本語で読めるものは新機能ガイドしかなく、オペレーションマニュアルから新機能の部分を抜粋したつくりになっており、参照先となるページが存在しなかったりして微妙な感じです。 特にソフトウェアに関しては英語を嫌っていては使えない製品ばかりになりかねないので、開き直って英語マニュアルに慣れちゃいましょう。 一応、1月中旬に日本語版マニュアルは japan.steinberg.net で提供予定ではあります。 (追記: 日本語マニュアルはこちらです)

関連情報

というわけで関連する情報をまとめておきます。

チュートリアルビデオ

You Tube 上での提供なのでどこからでも見れるようになりました。 10分前後のチャプターに分割されているのでモバイル端末で空き時間に少しずつみることもできるでしょう。

とりあえず、私は New Features の Chapter 1、2 (MixConsole) と 10 (コードトラック) を見て、これだけでお腹いっぱいな感じではあります。

デモ・マニュアル

デモについては、新たに追加された Lucky 7 だけでなく旧製品のプロジェクトも Cubase 7 用プロジェクトとなって提供されています。 Live Forever については Cubase 6 のときに書いたトラックの構成に関する記事が今でも参考になると思います。 MixConsole に慣れたいならば、まずはデモプロジェクトを開き MixConsole を使ってシグナルルーティングやエフェクト構成を確認してみると良いと思います。 ちなみに Lucky 7 もウタモノで結構な数のトラックをボーカル用に使っています。

Cubase を使った数撃ちゃ当たる作曲法

アマチュアでも何かの拍子に良いメロディが降りてくることがあると思います。 ただ、問題はそれがサビっぽいフレーズだけだったりして 1曲分を構成できるだけの量にならないことです。 なので、短いフレーズをいくつも貯めておき、さっき降りてきたサビに貯めておいた中から Aメロっぽいのと Bメロっぽいのをくっつけて 1曲にする、みたいな曲の作り方をしている人はそれなりにいると思います。 ただし、この場合も試行錯誤でいろいろな組み合わせを試さないとなかなか満足できる曲とならないかも知れません。 アマチュアの場合、まさに下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという状況ではないでしょうか。

もし、あなたがこのような作曲の仕方をしているならば Cubase のアレンジャートラックを使ってみると良いでしょう。 今回の記事ではアレンジャートラックを使って素材の組み合わせの試行錯誤を行う方法を紹介します。

スケッチ用プロジェクトを用意する

何はともあれ、まずは素材の数を増やさねばなりません。 思いついたフレーズを 1つのプロジェクトファイルに保存しておきます。 このとき、下の図のように素材を並べておきます。

メロディ+コード程度でよいですが、リズムも思い浮かんでいるのならば複数トラックを使って入れてしまってかまいません。 ただし、後で組み合わせて使うのが前提なので、調や拍子が異なる素材は別プロジェクトとした方が良いでしょう。

アレンジャートラックを追加する

Aメロ/Bメロ/サビ等の素材が複数そろったら、アレンジャートラックを追加し、図のように素材の長さに合わせたアレンジャーイベントを作成します。

アレンジャーイベントは鉛筆ツールで書いたり、左右ロケーターで区間を指定してダブルクリックしたりして作成します。 図ではわかりやすくするため、イベントを色分け (青、緑、橙) しています。

試行錯誤する

さていよいよ素材をつないでいきます。 これにはアレンジャーチェーンを使います。 これはアレンジャーイベントの進行順を示したリストで、アレンジャーモードをアクティブにすると曲の進行はトラック上のイベントの並びではなくこのアレンジャーチェーンでの並びに従うようになります。 上図のように「e」ボタンの左隣にあるボタンを押してオレンジにすればアレンジャーモードはアクティブになります。 アレンジャーチェーンの作成にはインスペクター上で作業しても構いませんし、「e」ボタンを押してアレンジャーエディターを表示して使用しても構いません。

例えば上のようなアレンジャーチェーンを作成すると「A3 → A3 → B2 → サビ1」という順でアレンジャーイベントが再生されます。 途中のイベントをクリックしてそこから再生することもできます。 アレンジャーイベントをアレンジャーチェーンに追加する方法は複数あって、イベントをダブルクリックしたりアレンジャーチェーン上へドラッグ&ドロップしたりすれば良いです。

まあ、実際の作業では並べ替えただけではなく、フレーズや構成の微調整が必要になるとは思いますが、試行錯誤をするにはアレンジャートラック機能が便利ということはわかっていただけたと思います。

ライブでも使えるよ

アレンジャートラックは、気分によって曲の構成が変わってしまうライブパフォーマンスにも活用できます。 リズムマシーン等で「パターンプレイ」と呼ばれている機能と説明すればわかりやすいかも知れませんが、アレンジャーイベントの順番をリアルタイムに指定しながら再生することができます。 次のイベントを指定しなければ現在のイベントをループ再生します。

再生するイベントの指定方法は簡単で、「アレンジャーパート」というタイトルのリスト内で再生するイベントの頭の三角を押すだけです。

アレンジャーパートリストの下の「停止」ボタンを押せば、その隣の「ジャンプモード」で指定したところまで演奏した後で終了します。 図の場合はイベントの終了まで再生して停止するので、エンディングも問題ないですね。 ジャンプモードで設定された値はイベント切り替え時にも有効です。

というわけでアレンジャートラックの活用法を紹介しました。 曲の構成を考える段階では便利に使えると思いますので、是非使いこなしてください。

DAW 環境についてつらつらと考えてみる

さてさて、今回は DAW 環境について思うところを書いてみます。 かなり個人的な意見ですが、機材を選ぶときの参考になればと思います。 私自身は Cubase を使用していますが、それ以外の DAW ソフトだからといって大きく変わることはないでしょう。

PC = 据置という割り切り

まず、Cubase のようなフルスペックの DAW ソフトを使うのであればデスクトップパソコンをお勧めします。 理由は、以下の通りです。

  • 大きいディスプレイを使うことができる
  • 10キー付きキーボードを使うことができる
  • ノートパソコンに比べて安価

まずディスプレイですが、DAW ソフトを使いこんでいくとトラック一覧/ソフトシンセ/エフェクト/ミキサー等の各ウィンドウを切り替えながら作業を進めることになるので、表示画面は広ければ広いほど良いです。 今は 1920×1080 のディスプレイを数万円程度で入手することができる時代ですし、望むのであれば昔ほどお金をかけることなくデュアルディスプレイ環境を構築することもできます。

また、ショートカットキーを覚えると (少なくとも Cubase では) トランスポート関連のコマンドを 10キーで操作できるようになります。 わざわざトランスポート用コントローラーを買うよりは 10キー付きキーボードを用意する方が安価に済みます。

確かに大きなノートパソコンでもこれらを満たすモデルはあるかも知れませんが、デスクトップパソコンに比べて高価になってしまうでしょうし、気軽に持ち出せる大きさには収まらないでしょうから、ノートパソコンにする意義も失われてしまいます。 通常ノートパソコンではデスクトップ用よりもパフォーマンス的に劣る省電力設計の CPU が載せられている点も注意が必要です。 部屋から持ち出して使うことが条件の場合、ノートパソコンだけを選択肢とするのでなく以下のような機材をデスクトップパソコンと組み合わせて用いることも検討してみると良いと思います。

外で作曲や編曲
iPad + GarageBand
スタジオに持ち込んで録音
ZOOM R16 等のレコーダー

これらの機材で作成したデータは帰宅してから DAW ソフトに取り込んで後の作業につなげることができます (GarageBand を使うなら Logic との組み合わせが望ましいですが)。 ライブで使うことを考えてもパソコンというのはやはり重たい装備だし、信頼性も今一つのように思うのです。

PC のスペック

昨年末 (2011年末) のことですが、ネットで評判の良かった BTO ショップ Sycom のミニタワーPC (VX Series) を購入しました。 これで Cubase での作業がかなり快適になったのですが、価格は送料を含めても 8万円しませんでした。 メーカー製は高価な上にごてごてと色々なソフトがついて不要サービスを止めるのに手間がかかったりするので、その点では BTO ショップがお勧めです。

詳細スペックは以下の通りです。

CPU: Intel Core i5-2500K 
Chipset: Interl H67
Memory: DDR3 SDRAM PC-10600 (8GB)
HDD: Western Digital WD20EARX (2TB)
OS: Windows 7 Professional 64bit

ディスプレイカードを別途購入するよりは内蔵グラフィック性能の高いものをそのまま利用しようと考えて Core i5-2500K にしています。 CPU やチップセットの選択では以下の Web ページを参考にしました。 (もっとも今だと Ivy Bridge + Intel 7シリーズチップセットが最初の選択肢になると思います。 「桜PC~」の方では Ivy Bridge 版についても説明されています。)

以前ノイズを避けるための Tips を書いたのですが、新 PC を 7万円台で購入した今となっては新しい PC を購入するのが一番簡単でお勧めできる解決策に思えます。 このスペックであれば何も考えずバッファサイズを小さくして使ってもほとんどノイズは発生しないので、絶対にノイズを出せない録音時以外は設定に神経質になる必要はありません。

ちなみにディスプレイは、CRT 時代は憧れのブランドだった NANAO (今は EIZO ブランドですね) の FS2332-BK (1920×1080) を同時期に購入しました。 ブランドにこだわらなければもっと安価に買えるでしょう。

コントローラー類

続いて周辺機器について考えてみます。 まず、楽器の未経験者でも鍵盤はあった方が良いでしょう。 とりあえずはミニ鍵盤で良いと思います。 大きい鍵盤を PC の横に置いたりすると気軽に作業を始められなかったりするので、それよりはミニ鍵盤を PC の前に置くことをお勧めします。 microKEY でも良いと思いますが、私は iPad で使う時に電源供給用 USB ハブが不要な Keystation Mini 32 を使用しています。

鍵盤以外のコントローラについても考えてみます。 先にも書きましたが、10キーがあればショートカットキーで操作できるのでトランスポートコントローラは不要です。 スライダーやノブ類は導入検討対象となりますが、制作スタイルによって必要なスライダー/ノブの数は異なってくると思います。 ミキシング時に複数チャンネルのボリュームををリアルタイムでコントロールするとなると 8本以上のモータードライブフェーダーが欲しくなるでしょう。 ただ、フェーダー操作を記録できる今となっては複数同時に動かすような使い方をするのは少数派かも知れません。

ちなみに私は UC-33e (販売終了) を使用しています。 あれば便利ですし、ボリュームの同時操作の他にも EQ の調整などでは重宝します。 UC-33e を使って私もやってみましたが、「オルガンのドローバー操作をしたい!」という人は 9本以上のスライダーが必要です。 できれば更にスライダーの + と – を逆向きにして最小位置で CC 127 を送れるものを選びましょう。(ソフト側で何とかできそうな気もしますが)

シンセパラメータ等のオートメーションデータ入力に使うということであれば、スライダー類の数はさほど問題になりません。 変更したいパラメータの数だけフェーダー操作を行えれば良いですし、記録後にマウスで微調整できるのでそれ程シビアに操作する必要もありません。 MIDI キーボードをはじめ最近のハードウェアシンセならば付属しているスライダーやノブで十分でしょう。

オーディオインターフェイス

入出力チャンネルの数に悩むかも知れませんが、最初はステレオ入出力で足りるでしょうし、余裕を見ても 4イン/4アウトで十分でしょう。 ただし、自分が使う楽器を考えて、マイクやエレキギターの入力に対応しているかをチェックする必要があります。 私は Roland の UA-101 という 10イン/10アウトのインターフェイスを持っていますが、ハードウェアシンセやアウトボードのエフェクターを持っていない限りこのチャンネル数は不要です。

ちなみに UA-101 は 2006年に購入したものですが、新 PC で使っている限り十分低レイテンシーです。 レイテンシーという点では、最近の ASIO 対応のものであればインターフェイス側はまず問題ないでしょう。

まとめ

というわけで DAW 環境について色々思うことを書いてみましたが、やはり大切なのは広い画面と最新の PC です。 最新といってもそこそこの価格で買えるもので良いので、ノイズに悩んでいるぐらいならば PC を買い換えてしまいましょう。

Cubase ドラム譜の作成

今回は Cubase 6 のスコア機能シリーズ3回目ということでドラム譜作成 Tips についてまとめてみます。

ドラムマップの使用

ドラム譜作成にはドラムマップが必須なので、まずこれを設定します。
Drum Map

ドラムマップ設定項目の「音符を表示」、「符頭の形状」、「ボイス」がスコアに関連してきます。 「音符を表示」と「符頭の形状」で五線のどの位置のどのような音符を表示するか設定します。 「ボイス」は多声部化機能の声部の設定になります。 多声部化機能の詳細はスコア入門記事で紹介したヤマハドキュメントの Chapter 3 や製品マニュアルを参照して欲しいのですが、複数のパートを含む楽譜を正しく表示するのに必要な機能です。

下の譜例の 2小節目では多声部化機能を使用して、4分音符を声部 1、全音符を声部 2 に設定しています。
Polyphonic Voicing

GM Map のボイス欄を見るとスネアやタム類がバスドラと同じ声部に設定されていますが、これをハイハット等の金物類と同じ声部である「1」に設定し直します。 簡単に言うとバスドラは 2、それ以外は全部 1に設定するのです。

元の GM Map をそのまま修正しても他のプロジェクトに影響しませんが、気になるのであれば「新規コピー」して使うと良いでしょう。
Copy Drum Map

世の中にはピアノロール画面でドラムパートを入力している人もいると思いますが、ドラムマップを設定したからといってピアノロール画面 (キーエディター) が使えなくなるわけではありませんので、安心してください。 そんな人は「ファイル」-「環境設定」の「イベントの表示」-「MIDI」で「ドラムマップ適用時はドラムエディターで編集」をオフにしておくと良いでしょう。

データ入力時の注意点

音符表示を正しく行うには表示用クオンタイズを細かく変えて調整していく方法もありますが、エディターを使ってこれから演奏データを入力するのであれば、ひと手間かけて音符の長さを変更しながら入力するのが良いと思います。 ドラムエディターを使う場合、音符の長さの設定がデフォルトの「ドラムマップとリンク」だとドラムマップに設定されているクオンタイズ値 (GM Map では 1/16) と同じ長さになってしまいます。 これを都度変えながら入力するのです。
Note Length

下の譜例の 2小節目では、1拍めのバスドラは 1/4、それ以外は全て 1/8 の音符長で入力しています。
Note Length for Score

既にデータ入力済みの場合は「MIDI イベントの長さをクオンタイズ」を使ってデータ修正を行うという手もあります。

ドラム譜の設定

データを用意できたらスコアエディタを起動し、スコアの設定を行います。 「スコア」-「設定」で「譜表」を選び、以下を行います

  • 「オプション」の「スコアドラムマップを使用」がチェックされているのを確認する
  • 同じく「オプション」の「符尾を固定」を「アクティブ」にする
    Options
  • 「ポリフォニック」で譜表モードを「ポリフォニック」とし、声部 1、2のみオンとする (休符の設定はうまく行かないときに見直すということで)
    Polyphonic

なお、ドラム譜はへ音記号を使って書かれているものを見ることが多いですが、Cubase では Neutral Clef が使用されます。 Neutral Clef を使う方がグローバル標準なのでしょう。 これをへ音記号に簡単に変える方法は見つけられなかったので、この表示に慣れてしまいましょう。 (ドラム譜では移調表示機能が使えないようで、ト音記号は良いのですが、へ音記号を選ぶと音符が上の方に行ってしまうのです…)

連桁の表示

4拍子で 8ビートの譜面を作ることを想定します。 この場合、ハイハットは 4+4 の連桁にしたいところです。 これを行うには、「編集」-「選択」-「すべて」または Ctrl-A で全ての音符を選択し、音符のコンテキストメニューで「グループ化/グループ解除」-「自動グループ化」とします。 するとハイハットが 4+4 の連桁となります。 (「自動グループ化」なので自動でやって欲しい気もしますが)
Grouping

ちなみに拍子記号の設定で (2+1+1)/4、「グループ化のみ」とすると、8分音符で 4+2+2 という3つのグループにできます。 使うことがあるかはわかりませんが。

また、グループ化はフィルター設定で可視化することができます。 可視化して表示される「グループ化」の文字を削除することでグループ化を解除できます。

スコアエディタ上での音符入力

ドラムマップの「音符を表示」欄の設定で複数の種類のスネアに C4 を割り当てた場合、スコア上で音符を新規追加するとドラムマップのリスト内で一番「ピッチ」が低いスネアサウンドが使用されます。 ですので、GM Map を使うと C#1「Side Stick」が入力されてしまうのですが、これが嫌ならばマップを作りかえるしかなさそうです。

なお、Ctrl を押しながら音符入力することで次に「ピッチ」が低いサウンドを入力することができるので、このテクニックを使えば D1「Acoustic Snare」を入力することができます。 同様にバスドラも B0 と C1 のサウンドを切り替えて入力できます。 ちなみにドラムマップ内のリスト表示順序は設定画面でドラッグ&ドロップして変えることができます。

というわけで、Cubase のドラム譜作成についてまとめてみました。 他の楽譜と同様に、音符表示や多声部化 (polyphonic voicing) 機能への理解が必要ですが、そこがわかってしまえばさほど難しくありません。 ドラムに関してはスコア化前提であれば演奏データ 入力時から気を付けておきたいところです。

Cubaseで演奏 (MIDI) データからスコアを作る

今回は Cubase 6 で演奏データからスコアを作る手順について詳しく書いてみます。 我が家ではレコーディングした演奏から譜面に起こす場合の他、ヤマハ音楽教室に通う息子用として XG 変換したエレクトーンソングデータからパート譜を作ることもあります。 今回は一段のパート譜の作成を想定していますが、二段譜を作る時はマニュアルの「多声部化機能」(ポリフォニック) の箇所を読んでおくと良いと思います。

スコア機能の基本についてはこちらの記事を参照ください。 表示拡大率設定/ページモード/レイアウトの扱い、あたりは前提知識ということで。

スコア用データの準備

まずは楽譜作成対象のトラックをコピーすることから始めます。 譜面起こしという目的では必要に応じてデータを修正しながらスコアを作る方がやりやすいので、演奏用トラックとは別にスコア表示用トラックを用意します。 この段階でクオンタイズもかけておきます。

スコア機能に慣れてくれば、データ修正を最小限に抑えて一つのトラックを演奏にも楽譜表示にも使うことは可能になると思いますが、最初のうちはスコア表示のみを考えて作業するのが良いと思います。

音符の表示の調整

さて、スコア表示用トラックの用意が出来たらこのトラックのみを選択して、スコアエディタを起動します。 で、大抵の場合は以下のような譜面が小さく表示されるので、これを見て「スコア機能は使えなさそうだ」と使うのをそこで止めてしまった人も多いのではないでしょうか? とりあえず画面表示について言うと 200% 表示ぐらいが作業しやすいです。
Display Quantize 1

で、続いて音符の表示なのですが「表示用クオンタイズ」を設定します。 全体の設定は「スコア」-「設定」で「譜表」-「構成」を選んで設定します。 デフォルトではこれが 1/16 (「16」) になっているので、これを 1/8 (「8」) にします。 また、「シンコペーション」も「全体」にしておきます。
Display Quantize Dialog

設定をすると以下のような表示となります。
Display Quantize 2

ちなみに「シンコペーション」が「オフ」だと以下のような譜面になります。 こちらの方が好みであればそれも良いでしょう。
Display Quantize 3

先の設定は全体での設定ですが、表示用クオンタイズは曲の途中で細かく変えることになると思います。 例えばこのあと 4分音符が続いたり白玉が続いたりしていると、その部分は 1/8 ではうまく表示されない可能性が高いからです。 あるいは 16分音符が出てくることもあるでしょう。

途中で表示用クオンタイズを変えるには表示用クオンタイズツールを使って変更イベントを挿入します。 「Q」ボタンを押してカーソルを Q 表示にしてから、変更箇所をクリックします。 全体設定と同じにしたいときは「譜表の設定に戻す」を押します。
Display Quantize 4

挿入した表示クオンタイズ変更イベントはフィルターの設定を変えることで表示することができます。
Display Filter

表示用クオンタイズを調整してもうまく表示できない場合は音符の長さを変更する必要があるかも知れません。 再生用トラックとは分けているので、気兼ねなくエディットしちゃいましょう。 音符を選択してから長さの表示をダブルクリックして値を修正します。 デフォルト状態では、長さ表示は「小節.拍.16分音符.ティック」で 120ティック=16分音符です。 (16分音符が 4つで 1拍っていうのはいいですよね?)
Note Length

それと音符を選択して Ctrl (Command) + 音符長さアイコンで長さを変えることもできます。 まあ、演奏が怪しかったりする箇所は一度消して書き直すのが早いと思います。 そのあたりは柔軟に考えましょう。

調号関連

E♭が D# と表示されてしまっている場合は、その音符を選択後「異名同音変換」の「♭」を押します。 これで表示が E♭に変わります。
Enharmmonic Shift

途中で転調する場合は「調号」を挿入します。 これを最初に見た時は一瞬コード名かと思ってしまいましたが、例えば「D maj」を選べば # が二つ付きます。
Key

小節や段のレイアウト

一段の譜面にしたいのにベースパートと分割された二段譜で表示されてしまったときは、「スコア」-「設定」から「譜表」-「ポリフォニック」で「単独」譜表モードとします。

段の切れ目はのりツールと分割 (はさみ) ツールを使って変えることができます。 分割したい小節線ではさみツールを使うとそこから新しい段になります。 またその段の最後の小節線でのりツールを使うと次の段とくっつきます。

のりツールやはさみツールで編集すると各段毎に小節線の位置がバラバラになってしまいますが、そんな時は Alt (Option) キーを押しながら小節線をドラッグすると位置を揃えることができます。

改ページ位置を変えたい時は選択された段の左に表示される青い四角上でコンテキストメニュー (左クリック) を表示し、「次のページに移動」や「前のページに移動」を選びます。 「前のページに移動」は一番上の段でないと使えません。
Blue Rectangle

Alt + 青四角ドラッグで段間の間隔調整もできたりします。 まあ、細かいことを書き始めるときりがないのですが、この程度を覚えておけば演奏データを最低限の楽譜にできると思います。 ここまで出来ればマニュアルを読むのも苦にならないでしょう。 私はまだやったことがないですが、「MIDI データの抽出」機能でオーディオデータから MIDI データを取り出すこともできるので、極めれば鼻歌を素早くスコアにすることも出来るようになるかも知れませんね。

Cubase スコア機能入門とタブ譜作成

今回は Cubase 6 のスコア機能の話です。

スコア機能を利用してみる

まず、スコア機能を一度も使ったことがない方のために、Cubase のスコア機能を使う上でのとっかかりをまとめておきます。 あの製品マニュアルを通して読むのはきついですものね。

スコア表示用トラックとデータ再生用トラックは分けた方が良い

既に複数のトラックが録音されていて楽曲演奏データとしては完成した状態のプロジェクト上でスコアを作るときのことを考えてみます。 特にリアルタイム入力で録音した場合に顕著なのですが、再生用データを綺麗なスコア表示するためにはそれなりの処理が必要となります。 ここで MIDI データに変更を加えず表示設定のみで何とかしようとすると手間が多くかかったり、最悪の場合、整形するのが無理だったりします。

ですので、このような場合は最初から録音済みトラックをコピーしてスコア表示専用のトラックをつくり、MIDI データの修正を行いながら楽譜を作っていく方が良いでしょう。 録音済み演奏データからスコアを作る際の注意点等はこちらの記事で詳しく説明しているので確認してください。

楽譜の設定は「レイアウト」単位で管理する

スコアを作るときの最初のステップは、スコア表示対象とするトラックを選択してスコアエディタを起動することです。 このトラックの組み合わせが新規の場合、スコアエディタを起動したところで (暗黙的に) 新規レイアウトとして登録されます。 この「レイアウト」の内容には選択されたトラックの組み合わせとそれに対する表記設定が含まれることになります。

現在登録されているレイアウトは「スコア」-「レイアウトを開く」コマンドで確認でき、ここからスコアエディタを起動することも可能です。
レイアウトを開く

このように複数のレイアウトを登録することで、1つのプロジェクト上でバンド全体のフルスコアとそれぞれのパート譜の表示設定を使い分けることができます。 レイアウト名は「スコア」-「設定」で表示される「スコア設定」ウィンドウの「レイアウト」タブ画面から変更することができます。

ページモードと編集モード

「ページモード」というのはいわゆる印刷レイアウト表示です。 「スコア」-「ページモード」でページモードと編集モードの間を切り替えることができます。 編集モードであればディスプレイ用に表示が最適化されますが、自分の好みで普段からページモードを使って編集を行っても良いと思います。 当たり前ですが、ページモードで正しく表示するには用紙サイズや向きなどを「ファイル」-「ページ設定」で正しく設定しておく必要があります。

スコア機能チュートリアル

製品パッケージ付属のクイックスタートガイドやチュートリアルビデオにスコア機能の説明はほとんどないのですが、以下のページからダウンロードできるガイドの3、4章が良いチュートリアルになります。

このドキュメントは Cubase 4 時代のものなので、Cubase 6 では一部ボタンの見た目が変わったり、メニューの構成が変わったり (気づいたところで「スコア情報を MIDI に適用」は「スコア」-「機能」メニューの一つとなっています) していますが、紹介されている機能はほぼ同じように使用できます。 4章まで終えれば様々な記号やコード表記もつけられるようになるので、最初のとりかかりとしてはよいチュートリアルになると思います。

ここまでを理解しておけば、後は必要に応じマニュアルを参照する程度で十分実践的な楽譜を作れるようになっているはずです。

タブ譜の作成

さて、いよいよタブ譜です。 アマチュアバンドだとやはり五線譜よりもタブ譜の方に慣れているプレイヤーが多いので、綺麗なタブ譜を用意できるようになると Cubase を活用する場が広がります。 今回はベース用タブ譜を作りますが、ギター用もインストゥルメント指定が異なるだけで同様に作成できます。

五線譜の作成

既に以下のようなベースパート譜が出来ているものとします。 先に挙げたガイドを操作しながら読んでいれば、この程度の楽譜を作成するのは何も難しくないと思います。
スコア1

タブ譜の作成

先に作ったベース用トラックから以下の手順でタブ譜を作成します。

  1. トラックを複製します。
  2. ベースのスコアは実際の音程より 1オクターブ高くなっているので、複製したデータをそのままタブ譜に直すと 1オクターブ高い譜面ができあがってしまいます。 ですので、複製したトラックをロジカルエディタで 1オクターブ下げます (-12半音)。
    オクターブダウン
  3. 元トラックと複製トラックの両方を選択してから、スコアエディタを開きます。
  4. 「スコア」-「設定」で「譜表」タブを選び、更にタブ譜用トラックを選んで「タブ譜」メニューを選択します。 表示された画面で「タブ譜モード」と「MIDI Ch.1~6」をチェックし、インストゥルメントは「ベース」にします。 このセッティングであれば、MIDI チャンネルにより明示的にどの弦を使うか指定することができます。
    スコア設定
  5. あとはスコア表示を見て、意図と異なる弦に表示されているノートに対し、MIDI チャンネルを設定します。 1弦=Ch.1、2弦=Ch.2、… と対応します。 Shift キー (Ctrl でもオッケー) +クリックを使って複数のノートを選択して、一気に変えることもできます。
    MIDIチャンネル

ここまでの操作で以下のようなタブ譜が出来上がります。

スコア2

いかがでしょう? スコア機能に馴染んでいれば、タブ譜作成も簡単だと思います。

Cubase は他にドラム譜も作れますね。 特にバンドでオリジナル曲をやっている方は、スコア機能を使えるようになると幸せになれると思います。 これまでスコア機能を使ったことが無い方も是非この記事をきっかけに挑戦してみてください。

なお、タブ譜には移調表示機能が効かないため今回は MIDI データを修正しましたが、五線譜表示の方を移調表示機能で「+12」にして作っておくと言う手もあります。 本来はこちらが正解なのでしょう。

Cubase 6 を買って2番目にすること

デモソングを聴こう!

「Cubase 6 を買ってまず最初にすべきこと」の続編です。 今回は何かというとデモプロジェクトの研究です。 デモプロジェクトはインストール用ディスクの以下のフォルダにあります。

\Cubase 6 for Windows\Addtional Content\Demo Projects

このフォルダにある「Cubase 6 – Live Forever」をハードディスクにコピーして「Live Forever Drums.cpr」を開きましょう。 Mac の場合はたぶん「Windows」を「Mac OS X」に変えたフォルダにあると思います。 まずは再生してビデオとサウンドを楽しみましょう。 この曲は Steinberg から YouTube 上でも公開されています。

プロジェクトの構造を把握する

このデモプロジェクトはオーディオトラックばかりなので MIDI データの打ち込み研究には使えません。 しかし、オーディオトラックに関してはかなりの部分を Cubase で音作りしているので細部を見るととても参考になります。

まず最初に見ておくべきはグループチャンネルトラックの使い方でしょう。 各トラックの出力先を把握して信号のルーティングを理解しましょう。 例えば「Bass Drum In」と「Bass Drum Out」は「Bass Drums」グループチャネルトラックに出力されています。 更に「Bass Drums」は「Drums」グループチャネルトラックに出力されています。 ドラムサウンドはこのように3段階でまとめられているので、どの段階でどのような EQ/エフェクト処理が行われているかを見ていくと面白いです。

ドラム関連

ドラムはマルチマイクで全部で 13本のマイクを使って録音されています。 バスドラとスネアについてはそれぞれにマイクを2本使っているので、人によってはこの部分だけでも楽しめますね。

音作りでは、EQ はもちろんですが、EnvelopeShaper の効果が面白いです。 私はこのエフェクトを使ったことがなかったのでとても参考になりました。

ギター/ベース関連

ギターは加工済みの音を録音しているトラックが多いですが、「Bass Guitar」と「Guitar Solo」は違います。 特に「Guitar Solo」はマルチテイクコンピング機能の使用例になっていますし、Cubase 6 の目玉である「VST Amp Rack」で歪み系から空間系までのエフェクトを使って音作りをしています。 これらをトラックプリセットとして保存すれば自分のプロジェクトで同じエフェクトを再現できますね。

ボーカル関連

ボーカルについてもバックグラウンドコーラスは加工済みトラックですが、リードボーカルについては EQ/コンプ/リバーブが Cubase の機能でかけられています。 これを聞いているとリバーブは RoomWorks で十分な気がしてきます。

更に遊ぶ

既に完成したミックスではあるのですが、自分なりにいろいろいじってみてマイミックスを作って楽しむと良いと思います。 ドラムはマルチトラックなので、スネアやバスドラの音を差し替えて遊ぶことが出来ます。 詳しくはチュートリアルビデオのチャプター8ですね。 シンセを重ねてみても面白いかも知れません。

というわけであまり巷で話題にならない Cubase 6 のデモプロジェクトを紹介してみました。 私の場合、曲そのものを結構気に入ってしまいましたが、ミュージシャンの名前がわからないのが残念です。

安価な練習用ミックスダウン素材の入手

「勢いで DAW ソフト買ってみたけど、曲なんてすぐ作れないし…。」みたいな方も世の中にはいるような気がするのですが、そんなときにとりあえずミックスダウン (最近はトラックダウンって言わないね) の練習から始めてみるのはアリだと思うのです。 いや、けっしてミックスが簡単と言うつもりはないですが、ソフトの使い方わからない上に曲作りの経験もないという状況であれば、まずはミックスダウンの練習をしてDAW ソフトの操作/信号の流れ/エフェクターの種類を覚えるというのは初めの一歩として踏み出しやすいのかな、と。 DAW ソフトを買うだけでいきなり立派な作品を作れるようになるのであれば、誰も苦労しないのです。

その時ミックスダウンの素材はどうするかという問題があるのですが、安く手に入れる方法はあります。 サンレコの素材付きの号を購入すれば、千円強で手に入れることができます。 実は今月号 (2011年12月号) も素材つきで、更にこの素材を使ったミックスコンテストも開催されていたりします。

素材という点では今月号は 1曲分ですが、昨年のミックスダウン素材付き号 (2010年12月号) は2曲入っていました。 まあ、曲の好き嫌いはあると思いますが、純粋にミックスの練習ということでは数が多いに越したことはないでしょう。 ミックスダウン解説特集としても昨年の記事の方が初心者向きに思えます。 もしこの号を購入するのであれば、Cubase 使いの方は合わせてこちらの記事を参照してみてください。

お約束 (?) なので、今月号特集に関しても Cubase でやる場合のヒントを書いておきます。 Cubase 6 を想定していますが、MixerDelay 以外は Cubase 5 でも利用できます。

  • 位相の反転は「オーディオ」-「処理」-「位相の反転」でオーディオ処理するか、エフェクトプラグイン「MixerDelay」を使うことで行うことができます。
  • 無音部分のカットは「オーディオ」-「高度な処理」-「無音部分の検出」でできます。
  • 「Maximizer」プラグインや「DeEsser」プラグインもあります。一応ね。

それと DAW ソフトのデモ用楽曲をいじってみるという手もあります。 Cubase 6 には「Live Forever」という素晴らしいデモプロジェクトが付属しています。 (2012.1.9 追記)

まあ、この辺はせっせと手を動かして覚えていくしかないと思います。 私はどちらかというとミックスの練習よりは楽器弾く練習の人なのでミックスの気のきいたノウハウは書くことができませんが (爆)。

Cubase 6 のテンポ検出機能を使う

Cubase 6 の新機能にテンポ検出機能があります。 以前からのタップテンポ機能も使えますが、テンポの変化がない曲はテンポ検出機能を使った方が早くテンポトラック作成を終えることができると思います。 しかし、実際に使うには多少慣れが必要なので、そのへんをまとめたいと思います。

まずはやってみよう

まずは実際にオーディオ素材を使ってテンポトラックを作ってみましょう。 「ファイル」-「読み込み」で「オーディオファイル」や「オーディオ CD」を実行してトラックにオーディオファイルを読み込み、このオーディオイベントを選択します。 各トラックは「リニアタイムベース」にしておきます。
リニアタイムベース

続いて「プロジェクト」-「テンポの検出…」を選びます。 このメニューが有効化されていないときは、きちんとオーディオイベントを選択しているか確認しましょう。 下図のダイアログボックスが表示されます。
テンポ検出パネル

ここで「分析」を押すとテンポ検出が始まり、オーディオファイルに合わせたテンポイベントが作成されます。 ただし、これだけだとうまく行かないことも多いので、「倍のテンポへ」他のボタンで調整します。 テンポの大きな変化がない場合は「テンポをなめらかに」を有効にしておきましょう。 拍は 1/4 で検出されるので後で手作業で修正することになります。

うまく検出できていない部分については手作業で直しますが、テンポイベントをずらすとその新しい位置によって後続のテンポイベントの位置が再計算されます (ただし、新しい位置がツボにはまった場合のみ)。 オーディオファイルの冒頭部分を修正する場合は、方向を変えて先頭に向かって再計算させることもできます。 右下の左向き矢印を押せば先頭に向かって再計算します。 なお、テンポイベントの調整はテンポ検出パネルを表示させたまま行います。 消してしまうと再計算されません。
再分析の方向

ちなみに左下の矢印は分析結果のリセットボタンなので気をつけましょう。

後からリズム隊が入ってくる曲の場合

イントロ前半は白玉シンセパッドのみ、みたいな曲 (今回、例として使用したのは葉加瀬太郎「ひまわり」) だとイントロ部分でテンポを検出できなかったりします。 こんなときの修正方法を説明します。

まずは先程の左矢印を使って可能なところまで再計算します。 ただ、自動分析した結果が限界でそれ以上は分析できないということもよくあります。 調整できるところを全て済ませ、「もう再計算しても無駄」という状況になったら次に進みましょう。 分析できていない部分の小節を、適切なテンポを計算し手作業で挿入するのです。 なお、拍子は 1/4 のまま手順を進め、最後に 4/4 にします。

最初に必要な情報は 2番目のテンポイベントの位置です。 1番目のテンポイベントはトラックの頭にあるので、その次のイベントの位置を読むということです。 (図ではカーソルが表示されていませんが) カーソルをイベント近辺に置くと下図のように表示されます。 今回の場合は 6.647 秒の位置にあります。 テンポ検出パネルはここまでで閉じます。
2番目のテンポイベント

続いてオーディオを再生してこのテンポイベントが何拍めかを確認します。 今回は 3小節目の 2拍め (4/4 拍子) だったので、2×4+2=10拍めということになります。

続いて 1拍めの位置を確認します。 通常オーディオファイルの開始≠ 1拍めだと思いますが、この 1拍めの位置を確認するのです。 やり方としてはオーディオトラックの波形を見ながらマーカーをつけて位置を確認します。 あらかじめスナップオフしておきましょう。
1拍目の位置

ルーラーを「秒」表示にするとマーカーの位置も秒で確認することができます。 最初の拍は 0.240秒であることがわかります。
マーカー

さて、挿入する小節とそのテンポを計算します。 まず先程数えた拍数より小節は 1/4 の小節を 10小節 (=10拍分) 挿入します。 そして、最初の 1小節 (=1拍) の長さは 0.240 秒なのでテンポは、

  60 ÷ 0.240 = 250

となります。60秒間に 0.240秒がいくつあるか数えればテンポになりますね。 続く 2小節~10小節 (=9拍分) の長さは 6.647-0.240=6.407 なのでテンポは以下の通りとなります。

  60 ÷ (6.407 ÷ 9) = 84.283

ここまで計算できれば後は小節とテンポイベントの挿入をすればよいです。 まず、10小節分のテンポの挿入します。 テンポトラックの小節処理ダイアログボタンをクリックします。
小節のテンポ処理

開始:0、長さ:10、拍子:1/4 で小節を挿入します。
小節の挿入

一度だけ「処理を実行」してから「閉じる」を押します。 オーディオトラックが小節の挿入によって後ろにずれていると思うので、(スナップオンしてから) ドラッグして元に戻します。

続いて、先程計算したテンポを使ってテンポイベントの調整です。 最初 (トラックの頭) のテンポイベントのテンポを 250 にします。 続いて2小節の頭にテンポ 84.283 のイベントを新たに挿入します。 トラック上に鉛筆ツールを使ってテンポイベントを挿入してからインスペクター上で数値を修正します。
テンポ調整

ここまででイントロ部分含めたテンポトラックが作成されました。 最後に 2小節目の頭に 4/4 の拍子イベントを挿入すれば完成です。 1小節目は時間調整のための 1/4 の小節になっています。

まとめ

長い文章になってしまったので、見ると面倒くさく思えるかも知れませんが、慣れればどうということはありません。 それでも、計算するぐらいならばタップテンポを使う、というのも良いでしょう。 実際のところ、テンポの変化が激しい場合はタップテンポを使うのが現実的な気がします。

私は MIDI シーケンサー (ヤマハ QX5) からこの道に入ったので MIDI を扱う場合は最初にテンポを決めるというのが当たり前でした。 しかし、子供が Piano Diary に自分の演奏を録音して音色を変えて楽しんでいるのをみると、自由なテンポで MIDI 録音という世界もあると改めて気づかされました。 Cubase のテンポ検出やタップテンポ機能はそのような使い方の強い味方になってくれると思います。

Cubase 6 を買ってまず最初にすべきこと

チュートリアルビデオを見よう

Cubase 6 を買ったらまずはパッケージ付属の「Quick-Start Video Tutorials」というディスクをコンピュータに入れてチュートリアルビデオを見るべきです。 見ていない人もどうやらそれなりの数いるようですが、2時間程度でレコーディング&ミックスの基本から新機能まで一通りが説明され、入門用としてはもちろん経験者にも得るものはあると思います。 少なくともネットで情報を漁るよりよっぽど効率よく基本知識を得ることができます。 付属品に日本語ビデオはないだろうと無意識のうちに思い込んでしまっているのかも知れませんが、付属プログラムで視聴する限りはきちんと字幕がつきます。 .mov ファイルを直接見ると字幕はつきませんが、ゆっくりな英語なのでこれを持ち歩くという手もあると思います。

というわけで、今回はこのチュートリアルビデオの内容を紹介します。 私自身もこれ全部は一気に消化できないので、必要になったときにもう一度見るための覚書にしたのです。 これを読んで興味を覚えたところだけ見ても良いですが、時間が取れれば一通り見ておくのがお勧めです。

また、「Cubase 6 を買って」シリーズ第2弾として、付属のデモプロジェクトについても書いたので参考にしてみてください。 (2012.1.9 追記)

ビデオの内容

チャプター 1 ~ 5 が Basic パート、チャプター 6 ~ 12 が Advanced パートとなっています。

1. はじめに (Getting Started)

インストールや画面の紹介があります。 ここら辺は余裕と思いきや、「タイムライン上で左クリックし、上下にドラッグでズームイン/アウト」なんて知りませんでした。

2. 接続 (Getting Connected)

主に「デバイス設定」画面の説明です。 ASIO/VST/レイテンシーの説明があるのですが、レイテンシーについては 5ms を超えると認識できる (noticeable) と言ってました。 言い方を換えれば、リアルタイムレコーディングを使いこなす人はできるだけレイテンシーが 5ms 程度に収まるような環境をつくっておくべき、ということですね。 バスや「VST コネクション」の設定の説明もあります。

3. オーディオ録音の基礎 (Basic Audio Routing)

オーディオ録音の基本です。 オーディオを複数トラック分録音して不要部分を「ハサミ」で切って消すところまで。

4. 基本的な MIDI ルーティング (Basic MIDI Routing)

MIDI の概要説明説明から始まって MIDI トラック/インストゥルメントトラックの扱いについて説明があります。 最初は使い方がわかりにくい「Beat Designer」の使い方も説明されています。

5. ミキシングの基礎 (Basic Mixing)

グループトラック、センドエフェクト、インサートエフェクト、EQ、ファイルへのミックスダウンについて説明されています。 その中で EQ の使い方が丁寧に説明されていました。 以下のルールが紹介されていました。

  • ブーストするのではなく不要部分をカットする
  • 特殊な効果を狙うとき以外は 6db 以上のゲインは避ける。もし EQ を多くかけなければならないようなときは、マイクの種類や位置を変えてとりなおすべき。

6. オーディオ録音とプロセッシング (Advanced Audio) Part 1

オーディオ録音関連ということで以下のような内容が紹介されています。

  • トラックプリセットの選択 (メディアベイ)
  • VST Amp Rack
  • パンチイン録音
  • サイクル録音とコンピング (複数のテイクから完成トラックをつくる)
  • VariAudio 概要

7. オーディオ録音とプロセッシング (Advanced Audio) Part 2

引き続きオーディオ関連で以下のような内容が紹介されています。

  • VariAudio でボーカルハーモニー作成
  • ドラム用トラックをノートごとに分割して個別に音作りする方法 (Groove Agent One × 10インスタンス以上使用!)
  • Media Bay の使い方
  • オーディオループの扱い (ドラムループを使ってリズムトラックを作る。テンポに合わせる。ベーストラックのピッチシフト)

8. アドバンスドプロダクション (Advanced Production) Part 1

以下のような項目が紹介されています。

  • ノートエクスプレッション
  • HALion Sonic SE
  • グループ編集 (複数のトラックをまとめて編集) とその他の細かな改善点
  • 向上したヒットポイント検出 (ヒットポイントはオーディオデータにつける、タイミングを示す目印)
  • ドラムオーディオデータから MIDI ノートを作成してサンプル音に差し替え
  • オーディオクオンタイズ

9. アドバンスドプロダクション (Advanced Production) Part 2

まず、録音されたオーディオデータにテンポを合わせる方法が紹介されています。 混同されやすい以下の語句を説明していました。

クオンタイズ
イベントを動かす
オーディオワープ
グリッドに合うようオーディオイベントを伸縮する
タイムワープ
オーディオイベントに合うようグリッド (テンポトラック) が調整される

その他にも以下のような項目が紹介されています。

MIDI エフェクト
Beat Designer がさらに説明されています
アレンジャートラック
サイドチェイン
ポンピングダンスベース (バスドラのサイドチェインでベースにコンプをかける方法)
コンプレッサーのパラメータ
スコアエディタ
ボーカルオーディオデータから歌詞入りのボーカルパート譜をつくる方法 (オーディオデータ -> MIDI データ -> スコア)

ちなみに、ポンピングに似て、アナウンスが入るときに BGM を自動的に絞ることをダッキングというのだそうですが、ポンピングもダッキングも言葉を知りませんでした…。

10. ドラム、ミックス、ディザリング (Drums, Mixing and Dither)

マルチマイクで録音されたオーディオドラムトラックで「カブり」を補正するオーディオ処理が紹介されています。 また、オーディオデータにヒットポイントを設定してスライスし、クオンタイズ実行する処理もあります。

続いてミックスダウンの基本操作が説明されます。 EQ の説明が中心で「100Hz 以下はノイズしかないよ」というのが印象に残るぐらいでした。

最後にマスタリングです。 以下の2つが鉄則とのことです。

  1. クリップさせない
  2. ディザリングをかける

11. ワークフローの効率化 (Workflow)

以下のような内容が紹介されていました。

  • Control Room の設定方法 (スタジオ卓についているようなエンジニア&プレーヤー間コミュニケーションマイク&モニターセットアップ機能)
  • 5.1 サラウンド
  • Cubase を使ったライブレコーディング、ライブパフォーマンス
  • LoopMash の使い方 (スライスを Groove Agent ONE のパッドにドラッグ&ドロップで割り当てることができます)

12. 外部コントロール機器の使用 (Remotes)

以下のような内容が紹介されていました。

  • オートメーションとクイックコントロール
  • デバイスパネル
  • リモートコントロール (MIDI コントローラー) のセットアップ
  • Cubase CC121 の紹介

まとめ

いかがでしょう? これらを一通り理解できれば初心者は脱出できるぐらいの内容が含まれていると思います。 初心者の方は今売っているサンレコ7月号 に「DAW で音楽を作るための基礎用語 88」という特集が組まれているので合わせて読んでおくとよいでしょう。

あと、ビデオを見ているとよく「○○ is a Cubase 6 exclusive feature」と表示され、Artist や Elements で使えない機能はそれなりにあることが実感できます。 機能比較表を見て悩むのも良いですが、使いこなしていくつもりがあるならばやはり最上位の Cubase 6 を購入するのがお勧めです。 使い込む人にとっては値段差以上に機能の差があるはずです。

まだ「そこまでは…」という人はまずはハードウェアを買うと付いてくる Cubase AI/LE で様子を見れば良いのではないでしょうか。 また、追加プラグインを買うのは Cubase 6 付属のものを使いこなせるようになってからで良いでしょう。