(多少のネタバレありです)
ミステリーに叙述トリックという分野があります。 この言葉を知らない人だと Wikipedia の説明を読んでも今一つピンと来ないかも知れませんが、要は作者が読者をだますわけです。 とするとどうしても最後に「大どんでん返し」が起こるわけで、その結末を知った読者が改めて最初から読み直した時に辻褄があっていると感じられるかどうかによってその作品の評価が決まるわけです。 素直に「だまされた」と感じられればその作品の評価は上がるけれど、「こじつけだよな」と思ってしまえばそれで終わりとなるわけです。
他に「バレバレじゃん...」というパターンもありますが...
何でこんなことを書いているかというと、今回読んだ「向日葵の咲かない夏」については好きになれなかったのです。 「ハサミ男」や「慟哭」は良かったと思っているのですが、その差は何だろう、と。
思いついたのは「向日葵の咲かない夏」というのは最初からフワフワした感じなのが、入って行けなかった理由なのかなと。 それを最後にひっくり返されても「ああ、やっぱりそっち行っちゃったか...」という思ってしまうだけだったのです。
どこがフワフワだったかというと、
- しゃべる蜘蛛
- 聡明な3歳児
というあたりで、どんな世界の話なのかなあ、と諦めてしまったのです。 最後に合理的な説明がつくわけですが、だったら、
- 警察への電話の仕方はじめ岩村先生関連のもろもろについてそれなりの事情や結末をつけて欲しい
- 猫の写真をニュースで流すことはないように思える (他にこの点を指摘している人を見たことがないので、私の読み方が間違っているかも知れませんが)
と思ってしまいました。
ちなみに私の場合、本屋で平積みにされ何人かの人が手に取っているのをみたのと「このミステリーがすごい!2009年度版作家別投票第1位」というオビで「向日葵の咲かない夏」の購入を決意しました。 「作家別」というのが怪しい感じでしたが...
「ハサミ男」と「慟哭」はお勧めします。 ですが、やっぱり叙述トリックは好き・嫌いが分かれるようで Amazon のレビューを見ると賛否ありますね。 こんなエントリを読ませておいて何なんですが、「叙述トリックだから」と構えないで素直に読むと楽しめると思います。